【書評・紹介】『軍曹かく戦わず』 立松和平
日中戦争に従軍した実際の通信兵の手記を元に描く、下士官の大変な日々。
装画:山中桃子
| ストーリー | |
| 描写 | |
| キャラクター | |
| 独自性 | |
| 電子書籍 | 無し |
| 他のメディア展開 | 原作手記 |
あらすじ
かつてこんな日本兵がいた。その日を生き抜くためにいかにして食糧を得るか-ぎりぎりの生を描く痛快小説。
軍曹かく戦わず 立松 和平(著) – アートン | 版元ドットコム (hanmoto.com)
書評
実在の通信兵、小松啓二氏の手記
『湘桂作戦 戦いなき兵士たち ある軍通無線・先任下士官の足跡』
を元に描かれた小説です。
舞台は、中国。
1944年、第二次世界大戦(日中戦争)の最中。
本土への空爆を防ぐために、B-29の基地を占領。
そして蒋介石率いる中国国民革命軍の撃破。
この目的を果たすために行われたのが、「大陸打通作戦」。
当時日本が統治していた満州とフランス領インドシナを結ぼうという作戦です。
その第二段階に当たる「湘桂作戦」に加わった通信小隊・青木小隊。
その下士官である小松軍曹が主人公。
そして、タイトルにあるように、よくある戦記小説と違うのは、戦闘描写が全くと言っていいほどない点。
なぜなら、戦闘ではなく通信を任務とする小隊だから。
そして、食糧集めが主題となっているから。
当時の日本軍の食糧事情はあまりにも有名です。
軍曹も例にもれず、今日を生きるため、部下の士気を保つため、現地徴発に苦労します。
通信小隊だからこそわかる実際の戦況。
戦闘に参加しなくとも、死んでいく部下達。
明日を生きるための食糧集め。
湘桂作戦がどのように進展していくかを、通信の傍受という形で描写しながら
一方で、作戦に振り回される下士官の苦労を描いた作品です。
戦争よりも、戦争に参加した兵士達はどのような生活を送っていたのかという小説です。
身近なもので代替すると、学校のクラスのようなイメージでしょうか。
担任と生徒達の間に立つ学級委員長。
間をうまく立ち回りながら問題を解決していく。
読み進めていくうちに、自分もこの小隊に属する一員となっているような気がしてきます。
そして、あらすじにある「痛快」とは、やはり食糧集めのこと。
現場を知らない軍部の命令に逆らわないように、バレないように、知恵を使って、食糧を集めていく。
80年前の「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」的な?
現場の苦労。面白いです。
でも、面白いだけでは済ますことのできない戦争の残酷さもまた描いています。
通信兵の手記を元に描いた、戦中の下士官の日々。
是非お読みください。
単行本
dorasyo329
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