【書評・紹介】『光圀伝』 冲方丁
水戸黄門の名で知られる徳川光圀の一生を描く
出会いと別れの物語
第3回山田風太郎賞受賞作
| ストーリー | |
| 描写 | |
| キャラクター | |
| 感動度 | |
| 落差が大きい度 | |
| 美しさ | |
| 電子書籍 | 有り |
| 他のメディア展開 | コミック |
あらすじ
何故この世に歴史が必要なのか。生涯を賭した「大日本史」の編纂という大事業。大切な者の命を奪ってまでも突き進まねばならなかった、孤高の虎・水戸光圀の生き様に迫る。
「光圀伝」 冲方 丁[文芸書] – KADOKAWA
受賞歴
第3回山田風太郎賞 受賞
書評
ストーリーとしては、水戸黄門として知られる徳川光圀の生涯を描いた作品となります。
一般的には水戸黄門のイメージが強いですかね。
でも実際光圀は水戸と江戸と鎌倉以外は行ったことがなく、ドラマとかの内容は全部フィクションです。
そんな中でこの光圀伝は比較的史実に忠実に描かれています。
光圀は第二代水戸藩主として知られるわけですが、実は三男に当たります。次男は幼くして亡くなってしまったのですが、長男はそんなこともなく無事に元服。長子継承が原則な武家社会の中で何故次男である光圀が世子として扱われたのか。という疑問の答えを追い求めるのが序盤。その歪な現状を正しくしようともがく中盤。
そしてこの作品のもう一つの大きな柱である史書編纂事業に取り組む終盤といった感じです。
この小説の一番面白いところは、やはり人との出会い、そして別れだと思います。
一人の人生を描くものだけあって、多くの出会いと別れが繰り返されます。
まずは何よりも兄頼重。兄である頼重ではなく自分が家督と継ぐという複雑な関係性を抱えながらも、同じ母から生まれた兄弟として江戸の初期を生きていく。兄として弟である光圀を思って行動する頼重の優しさというかにとても心を動かされます。
そして同じ時代を生きた有名人、宮本武蔵との出会い。わずかな登場ですが、この出会いが光圀の人生に大きな影響を与えます。
天地の狭間にあるもの、悉くが師だ
宮本武蔵
伯父松平義直。尾張藩の初代藩主であり、学問を好み図書館を作るなどし、また史書の編纂に取り組んだ人物として描かれます。この史書編纂事業がこの物語の柱の一つである光圀の史書編纂に繋がっていきます。
そして親友となる林読耕斎との出会い。二人は論法勝負という所謂ディベートが縁で出会うのですが、まずこの論法勝負が見ものです。論語や史記を引用する二人の儒学の勝負は読んでいてとても面白いです。
そしてもう一人の親友、朋友となる細野為景(冷泉為景)との出会いと親交。詩の美しさ、奥深さを二人の会話から再認識することができます。
会津藩主保科正之との出会い。文治政治を推進した幕府の大政参与として知られていますが、この小説でもその辣腕ぶりが描かれています。そしてこの保科正之との出会いもまた光圀の人生に大きな影響を与えます。
光圀の師、朱舜水。同時期に滅びた明国から逃れてきた儒学者で、光圀に招聘され、師となります。この朱舜水が光圀の思想、考え方に大きな影響を与え、物語の終盤を迎えるにあたってはある種の伏線を残すこととなります。
そして何より一番の出会いは、最初で最後の妻となる泰姫との出会いです。学識のある女性として描かれており、光圀との和歌や漢詩を通じたやり取り(イチャイチャ)などは必見です。この光圀と泰姫の話こそがこの作品の一番の見所だと思います。恋愛(要素を含む)小説として最高の作品です。
他にも、前作『天地明察』の主人公渋川春海や助さんのモデルとなった「佐々介三郎」など多彩で魅力的なキャラが大勢登場する作品です。何より後世水戸黄門として描かれるくらい個性的な人物として知られる光圀が主人公なのですから、キャラクターの掛け合いといった面では文句の付けようがない小説です。
また、上記でも少し触れましたが、この小説には和歌や漢詩が多く登場し、その文学的美しさを実感できる作品となっています。特に後水尾上皇が作ったとされる蜘蛛手の歌を光圀が初めて目にするシーンなどでは読者も光圀らの立場に立って感動することができます。
他にも泰姫のイチャイチャもそうですし、読耕斎との出会いのきっかけにもなった論法勝負など、文学の美しさ、奥深さをこれでもかと知ることが出来る作品でもあります。
また、光圀の政治・行政手腕を描いた作品としても楽しむことができます。
笠原水道の作成や開基帳の作成に絡む寺の破却、生類憐みの令で知られる将軍徳川綱吉との複雑な関係など、とても興味深く描かれています。
他にも歴史上の大きな出来事である、寛永の大飢饉や明の滅亡、紫衣事件、明暦の大火なども登場したり、紀州徳川家の謀反疑惑、禁じられている御三家同士の婚姻、天然痘の感染など次々に色々なことが起こり読者を最後の751ページまで飽きさせない内容となっています。
そんな息をもつかせぬ展開が続くからこそ、私の一番のおすすめポイントである光圀と泰姫の夫婦のある種日常といえるお話が際立っていて・・・。
とにかく私はこの光圀と泰姫の夫婦の話を読んでいただきたいのです!
第3回山田風太郎賞受賞、水戸黄門で知られる徳川光圀の生涯を描いた名作。是非お読みください!
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