【書評・紹介】『独裁力』 川淵三郎

2022年8月19日自伝,教養書,伝記,ビジネス書,ドキュメンタリースポーツ

この男がいなければ、日本女子バスケが東京五輪で銀メダルを獲得することはなかった。

日本バスケットボール協会の資格停止処分、オリンピック予選参加資格剥奪からBリーグ設立までに至る過程と共にBリーグ、Jリーグ初代チェアマンを歴任した川淵三郎が語るリーダー論。

私欲のない独裁者。それがリーダーの条件だ。

エピソード
面白さ
読みやすさ
独自性
電子書籍 有り
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内容

国際試合禁止の処分を受けるほど末期的な状態だった日本バスケットボール界を、わずか半年で問題解決に導き、新リーグを設立、一躍救世主となった著者。なぜ門外漢にもかかわらず、短期間で未曽有の改革を成し遂げることができたのか。嫌われることを恐れずに、しがらみを断ち切り、トップダウンで独裁的に決断を下す。ただし、私利私欲があってはいけない。著者はそれが優れたリーダーの条件だという。今年80歳になる〝キャプテン〟が、その稀有なるリーダーシップと果てなきバイタリティーの源を明かす、すべてのビジネスマン必読の書。

独裁力 | 株式会社 幻冬舎 (gentosha.co.jp)

書評

川淵三郎
初代Jリーグチェアマン。第10代日本サッカー協会会長。
初代Bリーグチェアマン。第13代日本バスケットボール協会会長。

スポーツに興味がない方でも名前くらいは聞いたことがあるのでは?

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(当時)による女性蔑視発言を受けて、その後任人事で名前が挙がり、先走って受諾宣言をしてしまい、世論から総バッシングを受けたあの人です(苦笑)。

当時私はテレビの前で「あーあ、晩節を汚しちゃったなー」とか思いながら事態を眺めていました(笑)。

この一件もあって川淵氏にあんまり良いイメージを抱いていない方も多いと思います。
しかし、この川淵氏。その手法はともかくとしても、日本のスポーツ界に大きな貢献をしてきたのは事実です。

表題にも書きましたが、「川淵氏がいなければ、日本女子バスケが東京五輪で銀メダルを獲得することはなかった」。少なくともこれは確かだと思います。
あるいは、Jリーグがここまで成功し、海外リーグで多くの日本人選手が活躍し、サッカーが日本でメジャースポーツとなったのも、この人がいたからだと私は思っています。

本書はそうした川淵氏がJリーグ、Bリーグの設立事例を通じて自身が考えるリーダー論、人材育成論を述べたものです。

ただ私があくまでこの本をおすすめしたい理由は、リーダー論などではなく、Bリーグ設立の舞台裏について当事者視点で関連人物の実名を出しながら語られているから。その一点に尽きます。

2016年以前はニュース番組のスポーツコーナーでも全くと言っていいほど触れられていなかったバスケットボール。それがBリーグ設立、そして八村塁選手や渡邊雄太選手の日本人NBAプレイヤー誕生などを経て、今では野球やサッカーと比べるとまだまだ小さいながらも取り上げられるようになってきました。

日本のバスケットボールを管轄する日本バスケットボール協会(JBA)。
2016年以前はこの協会のもと、日本プロバスケットボールリーグ(bjリーグ)と日本バスケットボールリーグ(JBL)という2つのリーグが日本国内には存在していました。
しかし、この状況を国際バスケットボール連盟(FIBA)が問題視。1つのリーグに統一し、Jリーグのようにピラミッド構造のリーグにするようJBAに求めます。けれどもJBAはリーダーシップを発揮できず統一は先送り。
2014年4月にFIBAはJBAに対し、10月末までにJBAが充分な回答を示すことができない場合、FIBAの会員資格停止処分(日本代表男子、女子、ユース、クラブチームレベルのすべてのカテゴリーでの国際試合出場が停止)を科すと表明。
ここまで至ってもJBAはリーグを統一できず、結局資格停止処分が下されます。この処分によって日本代表はリオ五輪の予選参加資格を失うはめに。
そんな時白羽の矢が立ったのが川淵氏。統一リーグであるBリーグの設立、更にはJBAの改革にも乗り出します。

本書では、JBAのどこに問題があったのか、それをどう解決していったのかなどが語られています。
また、Bリーグの地域との連携やスポンサー集めなどもJリーグの例を出しつつ語られていて、非常に面白いです。

例えば私のお気に入りのエピソード。Bリーグのマーケティングを巡ってある企業と交渉をしていた川淵氏。しかし3ヶ月経っても進展がなく、そんな折、ソフトバンクの孫正義会長から連絡が入り、ソフトバンクに支援してもらえることに。

さらに、その後の会食の席で、男子バスケットボール代表のユニフォームのスポンサーになってもらえないかとお願いすると、孫さんはこう仰った。
(中略)
「スポンサー料は、川淵さんの言い値で、ここで決めます」
二十数年前の白紙の小切手を思い出した。それで、思い切って数億円を提示したところ、即決していただいた。

独裁力 川淵三郎 94ページより

他にもバスケの試合会場となるアリーナの建設に関する首長の発言など、今日本で人々を熱狂させているBリーグは、こうした人々の助力があったからこそ成し遂げられたものなのだということがとてもよくわかる本です。

他にも「次の監督はオシム」発言の舞台裏など、Jリーグ関係でも面白いエピソードが多数述懐されています。

もちろんリーダー像について語ったビジネス書として読んでも非常に興味深い本ではあるのですが、それよりもやはりBリーグ設立までに至る過程を書いた自伝として読んだ方が面白いです。

初代Bリーグチェアマン、第13代日本バスケットボール協会会長を務めた川淵三郎が語るBリーグ設立までに至る過程とリーダー論。
是非お読みください!

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自称システムエンジニアのくせに、農学系の地方国立大に通うおかしな生き物。 ひつぎ教育研究所社長。 好物は恋愛小説と生物学、哲学。BL以外はなんでも読む雑食。 一応、将棋のアマ三段。