【書評・紹介】『とある飛空士への夜想曲 上・下』 犬村小六
愛する者を想い戦った飛空士達がいた
『とある飛空士への追憶』の続きを天ツ上の飛空士・千々岩の視点から描く
もう一つの恋と空戦の物語
幾万もの犠牲の先に二人が目にした景色とは
※『とある飛空士への追憶』のネタバレを含みます。
| ストーリー | |
| 描写 | |
| キャラクター | |
| 感動度 | |
| 独自性 | |
| 結末が気になる度 | |
| 電子書籍 | 有り |
| 他のメディア展開 | オーディオブック |
あらすじ
「海猫を墜とせ」
――天ツ上(あまつかみ)海軍撃墜王、千々石武夫(ちぢわ・たけお)飛空中尉に下されたその命令が、すべての始まりだった。
独断専行により海猫に一騎打ちを仕掛け、敗れた千々石は、再戦を胸に秘めていくつもの空戦場を渡る。
「空が選ぶのはお前ではない、おれだ」
「空の王はどちらか、決めよう」
激情の赴くまま撃墜を重ねる千々石の背後には、常に謎の国民的歌手、水守美空(みずもり・みく)の影が見え隠れする。千々石が片時も手放さないレコードに込められた想いとは……。
『とある飛空士への追憶』の舞台となった中央海戦争の顛末を描く、新たなる恋と空戦の物語。上下巻で登場!
とある飛空士への夜想曲〔ガガガ〕上 | 小学館 (shogakukan.co.jp)
書評
冒頭、『とある飛空士への追憶』の続きを描くと書きましたが、もしかしたら対になるといった方が適切かもしれません。
前々作で飛空士・シャルルと二度に渡り戦った天ツ上の飛空士・千々岩を主人公とする物語です。
シャルルが流民上がりの飛空士だったように、千々岩もまた早くに両親を亡くし中学にも行けず炭鉱で働いていたところから飛空士へとなりました。
そんな千々岩が飛空士を目指すきっかけを作り、支えてくれたのが本作のヒロインであるユキ。
千々岩は飛空士となり撃墜王を、ユキは国民的歌手となりレコードを出す。二人はそれぞれの夢を追います。
千々岩は努力し、向かうところ敵なしの飛空士となりました。
しかしそんな中、前作で描かれた海猫作戦にて千々岩はシャルルとファナに敗北を喫します。
初めて出会った好敵手。千々岩は今一度相まみえることを望みます。
本作はこの千々岩とユキの恋の物語と、千々岩とシャルルの空戦の物語の二つの軸からなります。
この恋物語がまた犬村小六先生の真骨頂。戦いに赴く者とそれを待つ者。
『追憶』では結ばれなかったシャルルとファナ。
じゃあ本作では、千々岩とユキは結ばれるのか。
前線で戦い続ける飛空士と国民的歌手の恋路。
戦闘と比して描かれる分量は少ないながらも、読む人に強烈なインパクトと満足感を与え感動させること間違いありません。
そして戦いの物語。
まずは何といっても犬村小六先生による空戦の戦闘描写。素晴らしい以外の言葉がない。
文字だけで架空の戦争機や空母の戦いを描くというのはとても難しいものだと思うんです。
それをいとも簡単にこなし、読者を戦いの中に引き込む。
その戦いの主役となる千々岩とシャルル。前作でも素晴らしい描写でしたが、今作ではそれが更にパワーアップしています。
そして千々岩の仲間たち。戦闘機での戦闘は一般に編隊で行われますので、千々岩の戦闘ではその仲間たちの戦いも描かれます。
この仲間たちのキャラも一人一人とても魅力的で・・・。
もちろん戦争、戦闘を描いているので死んでいく者たちもいるのですが、ただただ泣けます。
そしてその経過において、『追憶』ではあまり語られることのなかった中央海戦争の経過がより詳細に描かれます。
開戦から「海猫作戦」、空母による航空決戦である「ヴィクトリア海海戦」、サイオン島防空戦、第二の空母決戦である「エスト・ミランダ沖海戦」、世界史史上最大の決戦となる「淡島沖海戦」。
戦況も事細かに描かれ、最終的にファナが休戦へと導くまでの過程がとてもよくわかります。
そしてそれと関連して、何より『とある飛空士への追憶』を読んだ方がこの作品も読むべきなのは、その終盤に書かれた一文。
当時、大瀑布手前でサンタ・クルスを追い回した真電搭乗員の一名が幸いにも生存しており、老いた彼の口から語られる生々しくも臨場感のある空戦の模様は大勢の男性読者を熱狂せしめ、
『とある飛空士への追憶』 337ページより
歴史の闇へと葬り去られるはずだった海猫シャルルのことを後世語った人物が本作で登場します。
もうこのことだけで読む理由になると思います。
飛空士シリーズ第三弾。
『とある飛空士への追憶』 の続きであり対をなす、恋と空戦を描く感動の物語。
是非お読みください!
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