【書評・紹介】『愛×数学×短歌』 横山明日希
数学を短歌にのせて詠んだ愛。
美しく、読者を感動させる短歌集。
| ストーリー | |
| 描写 | |
| 絵 | |
| キャラクター | |
| 感動度 | |
| 美しさ | |
| 専門性 | 中 |
| 電子書籍 | 有り |
あらすじ
「座標から距離の出し方知ったけど距離の詰め方教科書にない」「いままでに覚えてきた公式もあなたの前じゃ解が出せない」……Twitterで話題になった「数学短歌」が書籍化!
数学と短歌。
一見、遠い分野のようで、実は何かつながるものがあるかもしれません。
数学という世界を取り入れることで、短歌で表現できる世界が広がります。
この本は、愛をテーマにした数学短歌をまとめた短歌集です。
数学同好会に所属する高校2年生の男の子と、地方から転校してきた文芸部の女の子。
自分にはない相手の魅力に惹かれ合う、そんなちょっと甘酸っぱい2人のストーリーを添えて、「愛と数学の短歌」をあなたに届けます。――本文より座標から距離の出し方知ったけど距離の詰め方教科書にない
平行線1°動けば交差するだから私も一歩踏み出す
今までに覚えてきた公式もあなたの前じゃ解が出せない
四捨五入して繰り上げた思いでも構わないから好きと言ってよ
切り捨てた端数のような恋心誤差が重なり何かが狂う
途中式全部とばして答えだけ合わせるような台詞はやめて
恋愛は掛け算だよねどちらかの想いがゼロになったら終わり
分母から君を見上げて何年目一線を越えて会いに行けたら
いままでの想いを全部かけてある「好き!」に付いてる階乗の記号
愛という定義できないこの想い一生かけて証明しよう……etc.
愛×数学×短歌 :横山 明日希|河出書房新社 (kawade.co.jp)
受賞歴等
全国学校図書館協議会選定図書に選定
書評
数学と愛を題材にした短歌集です。
高校生の二人が織り成す小説の展開(出会いやすれ違い)に合わせて、章ごとに短歌がまとめられています。
上記のように一応小説も含まれているので、小説関連のカテゴリも付けていますが、はっきり言って小説は低評価です。
会話が中途半端に非現実的すぎるというか、描写に違和感があるというか。
まず前者に関しては、そういう会話になるか?という。ある程度非現実的な世界観・展開、あるいは周囲とは異なる人物の会話なら納得するのですが、現実の世界の高校生の会話として、こうはならんだろという感想です。
後者に関しては、言葉のチョイスや読点、句読点の使い方などの違和感が主です。例えば、初対面の男子が女子に「とりあえずついてきな」と言う場面があるのですが、前後の言葉やキャラの個性から考えて「案内するよ」などの言葉の方が適しているのではないかと。
あるいは「岩手の実家に」ではなく、「実家の岩手に」と使っていたり、二文連続で「○○頃」と出てきたり、句読点を多く使うところと少なく使うところに差がありすぎたりなど。
ストーリーで描写を押し切ることができない短編小説ということもあって、日本語的に問題はないにしてもかなり描写の部分で違和感を抱きました。
小説部分は読まず、短歌の部分だけ読んだほうがいいような気すらします。
筆者の横山明日希先生は、数学の教養書を主に執筆されている方で小説家ではないということで、これならばいっそ、きちんとした小説家の方を立てて書いてもらったほうが良かったのではないかなと思います。
そんな小説と打って変わってイラスト・挿絵はとても素晴らしく美しいです。
いつか先生の恐らく水彩?の柔らかな絵のタッチが短歌ととてもマッチしていて、短歌の魅力をさらにさらに引き出しているように感じました。
そして、短歌。
これはもう、読んでください。
愛と数学の短歌コンテストに参加した数学と短歌を愛する作者の方々による珠玉の短歌集です。
私含め、数学好きは口下手というか、感情を伝えるのが苦手という印象がありますが(主観)、その思いを短歌にのせたらどうなるか。
最高の化学反応だと思います。
虚数を題材とするもの、漸化式を題材とするもの、確率を題材とするもの、etc…。
その多くは高校数Ⅱ、数Bまでの範囲ですし、数学の簡単な解説も付いているので、数学的な知識に不安があっても十二分に楽しみ、感動できる作品集です。
ちなみに、私が一番印象に残った一首はこちらです。
二人きり「月が綺麗」という私円周率を語りだす君
愛×数学×短歌 70ページより
(以下私の勝手な解釈です。)
「月が綺麗」。これは言わずもがな、夏目漱石が「I love you.」を「月が綺麗ですね。」と訳したことから。
そして「円周率を語りだす」。円周率は永遠に続く数、所謂無理数です。そこから一生続く、割り切れないという意味で3月14日や7月22日(22/7が円周率の近似値)に入籍するカップルも多くいます。
つまり、カップルが互いに文系の言葉と理系の言葉で愛を語り合っているわけです!
「月が綺麗」と「円周率」の対比。これはもう見事としか言いようがなくありませんか?
このように愛と数学を詠む素晴らしい短歌が多数出てきます。
数学は全ての自然科学を根底で支える原初の学問です。
数学的に「愛とは何か」を追求しようとしている人々もいます。
数学を短歌にのせて詠んだ愛。
数学はことこういうときにはいつも以上に雄弁であると思います。
美しく、読者を感動させる短歌集。
是非お読みください!
単行本
電子書籍
dorasyo329
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