【書評・紹介】『ジブリアニメで哲学する 世界の見方が変わるヒント』 小川仁志

2023年3月11日エッセー・随筆,教養書,哲学小川仁志,浮雲宇一,宮崎駿

巨匠・宮崎駿によるジブリアニメを哲学する。

読みやすさ
考えさせられる度
専門性
電子書籍 有り
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あらすじ

こんな見方もあったのか! 人気哲学者が教える、新しい「アニメの楽しみ方」。

ジブリアニメには、映画を観た人たちに、「あれは何を意味していたのだろう?」と深く考えさせる不思議な魅力がある。それは宮崎駿監督が、人間にとって重要なテーマを描いているからにほかならない。

本書では、そんな宮崎駿監督の10作品中に出てくる「風」「森」「城」「海」などの主要なモチーフを哲学し、作品に隠されたメッセージに迫りつつ、私達の生きる現実世界の本質を解き明かしていく。思考の楽しみに気づかせてくれるとともに、思わずジブリアニメを観返したくなる1冊。

ジブリアニメで哲学する | 小川仁志著 | 書籍 | PHP研究所

書評

ジブリアニメを一作も見たことがない人を探す方が難しいくらい、国民的アニメと言えるジブリアニメを哲学するという本です。

『風の谷のナウシカ』、『天空の城ラピュタ』、『となりのトトロ』、『魔女の宅急便』、『紅の豚』、『もののけ姫』、『千と千尋の神隠し』、『ハウルの動く城』、『崖の上のポニョ』、『風立ちぬ』の10作が題材です。
そして題材とする以上、作品を見たことがあるのを前提に書かれています。

「哲学」というと何か難しいというか、ややこしいというか、そんな風なイメージを持たれると思いますが、この本に限っては全くそんなことはありません。
むしろ、これが哲学?と感じるくらいの内容で、哲学の教養書と言うよりはどちらかというとジブリアニメを題材にしたエッセイと言ったほうが適当なような気すらする本です。
著者の小川仁志先生も

もしこれらの文章が形式としては詩やエッセイに近く、それでいて哲学的思考のようなものを感じさせる要素をはらんでいるとしたら、私の試みは成功していると言えるでしょう。

ジブリアニメで哲学する 7ページより

と述べられているあたり、この本はエッセイなのだと思います。
しかしエッセイでありながらも、超初級の哲学の入門書のような、読み終わったあとに今までよくわからなかった哲学の世界にほんの少しだけ知らない間に足を踏み入れたような気がする本です。

内容は、上記のスタジオジブリアニメ10作から
天空の城ラピュタ:「ロボット兵」とは何か
紅の豚:「豚」と何か
もののけ姫:「もののけ」とは何か
風立ちぬ:「飛行機」とは何か
のようなそれぞれ5つの問いかけを行い、それに対して著者が考えを述べていくという流れです。

1つの問いが大体4ページくらいの短い内容故、とても読みやすいです。

この本の醍醐味は、ジブリアニメの捉え方というか、考え方というかの1つである筆者の考えがわかりやすく簡潔にまとめられている点にあります。

例えば、「第6章『もののけ姫』で哲学する」の1つの問い。
「腕」とは何か。
アシタカは何故腕に呪いをかけられたのかという疑問から、腕という存在について、「腕を磨く」、「腕を上げる」などの言葉、そしてモロがエボシ御前の腕に加えた最後の一撃との関係性などに思考を飛ばしていく様が書かれています。

何故アシタカは腕に呪いをかけられたのかという疑問に対する明確な答えは存在しません。
より正確に言うのならば、観客1人1人が思い考えた答えがその人にとっての答えになるのだと思います。
そんな疑問を抱き考えることで、もっと言えば疑問に対する他者の考えを知り考えることで、宮崎駿が描いたジブリアニメという作品への理解が深まり、よりさらにジブリアニメを楽しむことが出来るのではないかと私は本書を読んで思いました。

巨匠・宮崎駿のジブリアニメを哲学するエッセイ。
是非お読みください!

文庫本

電子書籍

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自称システムエンジニアのくせに、農学系の地方国立大に通うおかしな生き物。 ひつぎ教育研究所社長。 好物は恋愛小説と生物学、哲学。BL以外はなんでも読む雑食。 一応、将棋のアマ三段。