【書評・紹介】『白狐魔記 源平の風』 斉藤洋
きつねの目から見た源平合戦を描く。
大人にも子供にも読んで欲しい1冊。
| ストーリー | |
| 絵 | |
| 描写 | |
| キャラクター | |
| 平易さ | |
| 独自性 | |
| 電子書籍 | 有り |
| 他のメディア展開 | オーディオドラマ |
あらすじ
白駒山の仙人の弟子となって修行したきつね・白狐魔丸の大河タイムファンタジー。源義経一行に会った白狐魔丸は武士について考える。
源平の風 | 偕成社 | 児童書出版社 (kaiseisha.co.jp)
受賞歴
全国学校図書館協議会選定図書に選定
書評
人間のことをもっと知りたいと思ったきつねは、人里の近くで暮らし始め、人間のことを知り、その言葉も解すようになった。
そしてきつねは人を化かす、白駒山にいる仙人のもとで修行をしたきつねだけが神通力を使うことが出来るという話を聞く。
旅の末、白駒山で仙人と出会い、修行するきつね。
そんな折、仙人から里帰りを進められ、白狐魔丸という名を授かった後きつねは里帰りの旅に立つ。
その道中、討手に追われる源義経と出会い・・・
というお話です。
この『白狐魔記』シリーズは1996年から続いており、本作はその第1巻です。
時代は平安時代から鎌倉時代(諸説ありますが1183年、1185年説を取った場合)。
タイトルの通り源平合戦(治承・寿永の乱)が行われている頃です。
前述の通り、所謂妖狐となった狐と兄の怒りを買って追われる身となった源義経一行が出会ってというお話。
主人公の白狐魔丸は普通のきつねでした。しかし、人に興味を持ち、仙人の元で神通力を扱えるように。この白狐魔丸の行動の根底にある「人間とは何か」、「武士とは何か」を考えるのがストーリーの1つの軸です。
この『白狐魔記』の特筆すべき点は、このきつねから見た人を描いたという点。源平合戦も人の目から見れば権力を巡る争いあるいは復讐劇ですが、きつねから見るとただの縄張り争いや殺し合い。こうしたきつねの目からみた源平合戦が語られているところがこの作品の面白いところの1つです。
シリーズ第1巻ということもあり、この白狐魔丸の生い立ちなどが文量の多くを占めています。
そんな白狐魔丸の師である仙人。
感情豊かな若い男の姿をした人物。よくイメージされる髭の生えた翁とは似ても似つかない人物です。
この仙人には謎が多く、これらはシリーズを通して描かれるのでここでは割愛。
とても魅力のあるキャラクターです。
そして義経一行。
と言っても名前が出てくるのは、
源義経
弁慶
佐藤忠信 の3人。
前者2人の紹介は省きますが、想像通りのキャラクター像です。
佐藤忠信。ご存知でしょうか。
一応、義経四天王と呼ばれるうちの1人で義経の頼れる部下です。
人形浄瑠璃や歌舞伎の演目である「義経千本桜」では、義経の身代わりとなって一人奮戦し自害するという、壮絶な最期もあってかなり目立つ人物です。
そしてその「義経千本桜」の四段目は
静御前の持つ初音の鼓の皮となった親狐を慕って、その子狐が佐藤忠信に化け、最後に正体をあらわして義経の危難を救う。
精選版 日本国語大辞典「狐忠信」より
という内容になっており、この狐は「狐忠信」と呼ばれています。
そう!きつね。
恐らく、化け狐が源義経一行と出会うというストーリーはこの浄瑠璃が元になっていると思われます。
そんな本作の魅力。
ストーリーは児童文学だけあってわかりやすく、面白いです。
しかし私はそのストーリーの原点である白狐魔丸の「人間のことをもっと知りたい」という探究心。これが根底にあることがこの作品の魅力だと思います。
上でも述べましたが、この白狐魔記は狐から見た日本人の歴史を書いた小説です。
人とは異なる生物の目線から見た歴史は、人間の目から見たものと同じところもあれば違うところもあります。
こうした「人間とは何か」というある種哲学的な問いを根底に置きつつ、子供向けとして良い意味で平易な文章で、わかりやすさと面白さを兼ね備えた作品がこの『白狐魔記』です。
きつねの目から見た源平合戦を描く。
大人にも子供にも読んで欲しい1冊です。
是非お読みください!
単行本
電子書籍
dorasyo329
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