【書評・紹介】『このぬくもりを君と呼ぶんだ』 悠木りん

2022年6月2日小説,ポスト・アポカリプス,高校生(青春),漫画,高校生(青春),GL(百合),GL(百合),ポスト・アポカリプス,SF小説,SF漫画,終末もの(小説),青春小説,終末もの(漫画),青春漫画,フルカラー,ライトノベル仲谷鳰,悠木りん

百合×青春
フェイクだらけの世界でリアルを探す2人の少女

著者:悠木りん
イラスト・漫画:仲谷鳰

ストーリー
描写
キャラクター
独自性
電子書籍 有り
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あらすじ

繋いだ手のぬくもり。これはきっとリアルだ
「この雨も、風も、空も全部。もうずっと昔に地上にあったものを再現してるだけ。ただのフェイクじゃん」
有機ディスプレイは偽物の空を映し、人工太陽の光が白々しく降り注ぐ地下都市『Polis-UK8』。この全てが人の手によって作られたフェイクタウンで生きる十六歳の少女・レニーは、周りに溢れるフェイクを嫌い、リアルな『何か』を探している。
そんなレニーが出会ったのは一人の少女・トーカ。サボリ魔で不良少女たるトーカに、レニーは特別な『何か』を感じ、一緒の時間を過ごすようになる。
ある日、レニーの前に空から謎の球体が降ってくる。まるで太陽のように真っ赤に燃えていた小さなそれを、レニーは『太陽の欠片』と名付け正体を探ろうとする。
一方その頃、トーカの方でも何やら変化が起こっていて、二人の日常は音を立てて崩れ始めていく―― 。
「きっと隣にレニーがいるから――こんな毎日なら、あたしは悪くないと思えるんだ」
いつかトーカが言った言葉。あれはフェイクだったの? それとも――。
第14回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞作!
地下都市に生きる二人の少女のリアルとは――ガールミーツガールから動き出す、青春SFストーリー!

このぬくもりを君と呼ぶんだ | 書籍 | 小学館 (shogakukan.co.jp)

受賞歴

第14回小学館ライトノベル大賞 優秀賞

書評

まずカテゴリについての補足を。

本作のカテゴリには「小説」と「漫画」という2つのカテゴリをつけました。
これは、ライトノベルでありながらも、最後に後日譚として仲谷鳰先生による8ページの漫画が掲載されているからです。

また「百合」というカテゴリも付けていますが、どちらかというと友愛やソフト百合の解釈です。
この関係性を恋愛と受け取るかどうかは読者によると感じました。

なお、小学館によるPVがありますので、まずはそちらをば。

本編

はっきり申し上げて、私はストーリーが面白いとは思いませんでした。
かと言ってキャラ読みをして最後まで読んだわけでもありません。

では何故わざわざここに書こうと思ったのか。
端的に言えば描写です。

2人の少女の関係性、そして主題とも言える「フェイクだらけの世界からリアルを探す」
この2点に焦点を絞った時、この作品は間違いなく良書であると言えると思います。

舞台はオゾン層の破壊によって紫外線が降り注ぎ、地上に住めなくなった人類が作り上げた地下都市。
しかし、表紙のように空は青いです。
これは、有機ディスプレイの映像。
人工降雨装置によって雨も降り、一見すると地上の世界と違いはないように見受けられます。

しかし、主人公・レニー(表紙左の少女)はこれらをフェイクと嫌い、フェイクだらけの地下都市を嫌っています。
そんなレニーはある日、不良少女のトーカ(表紙右の少女)と出会い、一緒にご飯を食べたり、学校をサボったりするように。

レニーは成績優秀な生徒。
しかし実際は、フェイクを嫌い、リアルを追い求め、トーカと一緒に授業をサボったりする少女。
これは現実世界で言えば、「本音」と「建前」に苦しむ思春期の少女と言い表せるかもしれません。

そんなレニーが出会ったのが不良少女のトーカ。
レニーはトーカに何か特別なものを感じ、共に過ごすように。

しかし、出会いからしばらくして日常は少しずつ崩壊し始め。。。
これをレニー目線から描くのが一章。
トーカ目線から描くのが二章です。

三章、四章もそれぞれレニー、トーカの目線から同じことが描かれ、
五章はそれぞれの目線から物語の結末が描かれます。

後日譚 いつか一緒に

仲谷鳰先生による8ページのフルカラー漫画です。
表紙もまた漫画の1コマなのだと考えて良いと思います。
レニーが一番のフェイクと捉えていると言ってもいいような、空が映る有機ディスプレイ。
これがカラーで描かれることで、彼女らが見ている、見ていた世界を追体験することができます。

総評

SFであり、ポスト・アポカリプスでもある本作ですが、
主たるジャンルはやはり百合×青春。

ネタバレになってしまうというのと、上手く言語化できないのであれなんですけども
舞台設定はSFであれども、描かれていることはそう特別、特殊なことではないと思うんです。
しかしそれでも、2人の少女の感情・関係性における言葉・描写から伝わる、温かさというか優しさというかは、読んでいて心に訴えかけてくるようで。。。
結局一言でまとめてしまえば、「素晴らしい描写であり百合である」としか、私が持ち合わせている言葉では表現できないのが悔しいところ。。。

フェイクだらけの世界でリアルを探す少女達。
この2人の少女の描写が本当に見事です。

是非お読みください。

文庫本

電子書籍

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自称システムエンジニアのくせに、農学系の地方国立大に通うおかしな生き物。 ひつぎ教育研究所社長。 好物は恋愛小説と生物学、哲学。BL以外はなんでも読む雑食。 一応、将棋のアマ三段。