【書評・紹介】『終末世界百合アンソロジー』

2022年6月24日ポスト・アポカリプス,漫画,GL(百合),恋のライバルなんて必要ない! 二人の関係性だけで描かれ敗者が存在しない恋の物語,青年漫画,アンソロジーコミック,SF漫画,終末もの(漫画),短編集,恋愛漫画こるせ,tsuke,くわばらたもつ,田口囁一

ポスト・アポカリプス×百合を描いたアンソロジー!
滅んだ後の世界での少女たちの生き様が7人の作家陣によって描かれます。

カバーイラスト:こるせ
コミック:岡ぱや、くわばらたもつ、しろし、田口囁一tsuke、吐兎モノロブ、結川カズノ

ストーリー
キャラクター
感動度
温かさ・冷たさ
電子書籍 有り
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あらすじ

[ここ]ではない[どこか]へ。
…あなたとなら行ける。
荒廃した世界で生きる、「彼女」たちの繋がりを描いたアンソロジー。
灰色の世界で、なお褪せることない心の色を、豪華執筆陣によるオール描き下ろしでお届けします。

作品紹介 | コミック百合姫 | 一迅社 (ichijinsha.co.jp)

書評

ポスト・アポカリプス×百合を描いたアンソロジーです。
全7話。

カバーイラスト こるせ

まずは、本編に入る前にカバーイラストについて。
こるせ先生の描かれた、終末世界に佇む2人の女性のイラスト。
ずっと見ていたい美しいイラストですが、
同じくポスト・アポカリプス×百合を描いた作品『きみと世界の終りを訪ねて』に登場するミミとユユではないかなあと。

髪型も服装も同じですし……。

『introduction』 しろし

ページ数は12ページ。
この本のIntroductionではありません。
いや、短編集の導入という意味では正しいですが、どちらかというとこの意味は「伝来」なのかなあと思いました。

舞台は、生き残った人類のほとんどが都市に閉じこもった世界。
少女2人は都市の外で、旧世界の遺物を糧に生きています。
そしてその中には「本」も含まれていて。。。
終末世界を描いた作品でありながらも、明るい雰囲気というかが感じられる作品で、且つ絵柄がその雰囲気ととてもマッチしていて、本好きにはたまらないささやかな百合の短編です。

『海は何色』 結川カズノ

ページ数は30ページ。
舞台は、汚染された世界で生き残った人類達が住む都市。
そこではアンドロイドも存在していて、終末世界は終末世界でもまだリソースに恵まれている雰囲気。
そして政府は、アンドロイドの生産を再開し、旧型のアンドロイドを外界へ送り調査しようとしている。

そんな世界で出会った2人の女性の物語です。
一方でこれを百合と呼ぶのかは少し疑問な作品。
ポスト・アポカリプスにおける希望というかを描いた短編です。

『SPUTNIK』 吐兎モノロブ

ページ数は16ページ。
災害により環境が激変した世界で、人類は遺伝子操作を行うことでその環境に適応した人を生み出した。
それがタイトルにもなっているスプートニクであり、主人公たち。

禁忌に手を染めたことで生まれた終末世界を生きる彼女達は何を思うのか。
タイトルの意味の回収も含めて、ストーリーが非常に良い作品だと思いました。
もちろん百合も!

『Touch me if you can』 田口囁一

ページ数は12ページ。
1人だけ生き残った少女と都市を管理するAIの物語。
「ポスト・アポカリプス」よりも圧倒的に「百合」の要素の方が強い作品です。
前の3話を読んできて良い意味で度肝を抜かれるというか。

世界にたった1人だけという現実が物語の根底にありながらも、決して悲観的ではなく、むしろとても明るくて温かい。そんな百合です。
というかこのアンソロジーの中ではかなりのガチ百合です。
百合最高!

『卵の殻を破らねば』 岡パヤ

ページ数は46ページ。
ページ数から見ても、内容から見ても、本作がこのアンソロジーの核となる作品であることに間違いないと思います。

舞台は、文明が崩壊した後の学園都市。
主人公らはそこで暮らす学生。
人類の未来のために高度な教育、研究を行うイメージ。

ネタバレになるため書けることは少ないのですが、これこそポスト・アポカリプス×百合の最たる例だろうと。
ストーリー展開、そして結末に惹かれること間違いありません。

『チュウ虎シャングリラ』 くわばらたもつ

ページ数は20ページ。
ガラッと作風が変わります。
汚染地帯に囲まれた町の中で互いに争う鼠と虎のリーダー同士を描いた作品。
転じて、敵対するグループのリーダー同士の百合的な作品。

終末世界的な暗さというかはありながらも、結果コメディ的なそんな短編です。

『トワイライトにおやすみ』 tsuke

ページ数は20ページ。
このアンソロジーを締めるに相応しいポスト・アポカリプス×百合作品。

登場人物は悠久の時を生きる聖女とそんな聖女に憧れる少女。
終末世界で生きる聖女は、滅亡に瀕した人類が作り出した存在。

永遠を生きる聖女と限られた時を生きる少女がいずれ別れを迎えるのは必然ですが、それを描く描写が見事です。
何より少女も聖女様も可愛い。

総評

どの作品も見事という一言に尽きます。
終末世界という暗さを感じさせるお題と、それに寄り添う百合という要素。

ポスト・アポカリプス×百合を描いたアンソロジー。
是非お読みください!

単行本

電子書籍

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自称システムエンジニアのくせに、農学系の地方国立大に通うおかしな生き物。 ひつぎ教育研究所社長。 好物は恋愛小説と生物学、哲学。BL以外はなんでも読む雑食。 一応、将棋のアマ三段。