【書評・紹介】『銀河英雄伝説1 黎明篇』 田中芳樹
専制君主制の銀河帝国と民主共和制の自由惑星同盟
宇宙の行く末を懸けた2人の英雄の戦いを描く第1巻
| ストーリー | |
| 描写 | |
| キャラクター | |
| 続きが気になる度 | |
| 独自性 | |
| 電子書籍 | 有り |
| 他のメディア展開 | コミック、テレビアニメ、OVA、アニメ映画、外伝、実写映画、オーディオブック、演劇、ゲーム、ミュージカル |
あらすじ
【星雲賞受賞シリーズ】
銀河系に一大王朝を築きあげた帝国と、民主主義を掲げる自由惑星同盟が繰り広げる飽くなき闘争のなか、若き帝国の将“常勝の天才”ラインハルト・フォン・ローエングラムと、同盟が誇る不世出の軍略家“不敗の魔術師”ヤン・ウェンリーは相まみえた。この2人の智将の邂逅が、のちに銀河系の命運を大きく揺るがすことになる。日本SF史に名を刻む壮大な宇宙叙事詩。解説=鏡明
銀河英雄伝説〈1〉 黎明篇 – 田中芳樹|東京創元社 (tsogen.co.jp)
受賞歴
第19回星雲賞 受賞
書評
歴史に残る屈指の名作。
『銀河英雄伝説』、略して「銀英伝」の第1巻です。
本作の素晴らしさは、星雲賞を受賞していることからももうおわかり頂けると思います。
星雲賞受賞作の装画をこれまた星雲賞コミック部門受賞者の星野之宣先生が描かれているというのもまた。
本作のその影響力を物語るエピソードとして、第17回本屋大賞受賞作『流浪の月』の作者・凪良先生の創作のきっかけが本作の二次創作であることなどが有名です。
もちろん他にも本作に影響を受けた作家は数知れません。
そんな本書ですが、発売から約40年。
3つの出版社から6つの版(レーベル)に渡って出版されました。
ここでは最新版、2007年出版の東京創元社「創元SF文庫」に基づいて紹介していきます。
舞台は宇宙。
ワープや重力操作が可能となっている世界。
人類は地球を捨て宇宙へと進出。
総人口3000億人を超えるまでの発展を遂げました。
しかし、歴史は繰り返すもの。
銀河統一政府によって所謂世界政府を樹立したものの、政治の停滞により独裁者が出現。
独裁者、ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムは銀河統一政府を廃し、銀河帝国(ゴールデンバウム朝)を建国。
しかし、独裁には弾圧がつきもの。
独裁体制に反発した一部の人々が、帝国の支配を脱し逃走。
逃避行の末、未開の恒星群へとたどり着き、そこに自由惑星同盟を建国。
宇宙は専制の銀河帝国と民主共和制の自由惑星同盟に二分され、2つの政体は戦争状態へと突入しました。
その銀河帝国と自由惑星同盟にそれぞれ1人の英雄が誕生します。
銀河帝国では、ラインハルト・フォン・ローエングラム。
自由惑星同盟では、ヤン・ウェンリー。
この2人の戦い、そしてそれを巡る物語が描かれるのが本作です。
本書の魅力は何と言ってもその戦争描写。
数万隻同士の宇宙艦隊の戦闘。
数百万人が戦闘に加わる戦争です。
その大規模な戦いにおける、戦略、作戦、戦術。
2人の智将がその才能を遺憾なく発揮して行われる戦いは圧巻です。
そしてその描写もまた素晴らしい。
言葉の選択、表現の創造は元より、2人の英雄を通して描かれる大局的な戦いと、その部下などを通して描かれるより局所的な戦いなど、見事としか言いようがありません。
キャラクターについても同様です。
はっきり言って、登場人物が多すぎて誰だっけこの人となることが読み始めた当初はよくあります。
しかし、幾度も登場する主要キャラにはしっかりとキャラ付けがなされており、気がづけば読者はその虜になっていること間違いなしです。
本作、本シリーズを形容するたとえとして、よく『三国志』や『水滸伝』といった作品が持ち出されますが、実に言い得て妙であると私は思います。
『三国志』や『水滸伝』はどちらも史実に大なり小なりの脚色を加えて描かれた作品です。
では、『銀英伝』はどうか。
言うなれば、"未来"の史実に脚色を加えて描かれた物語です。
SF×戦記としてこれほどに完成された作品はありません。
最後に1巻自体の魅力について。
前述の通り、本作は銀河帝国と自由惑星同盟の戦い。
転じて、専制政治と民主政治の戦いを描く作品でもあります。
そして読者はどっぷりと民主政治に使った日本人。
感情としては、自由惑星同盟に与し易い。
しかし、実際はそうなりません。
こんなことを言うと非難されるかもしれませんが、民主政治にもデメリットはあるし、逆に専制政治にもメリットがあります。
この専制政治と民主政治の対比が戦いを通して描かれているのもまた見事です。
特に、文民統制・シビリアンコントロール。
使い古されたテーマでもありますが、色々と考えさせられる作品でもあります。
アニメ化を始め多種多様なメディア展開もなされた不朽の名作『銀英伝』。
その1巻。是非お読みください!
紙書籍
愛蔵版(2022年)
マッグガーデン・ノベルズ(2018年)
創元SF文庫(2007年)
徳間デュアル文庫(2000年)
徳間文庫(1996年)
トクマ・ノベルズ(1982年)
電子書籍
全巻セット
dorasyo329
最新記事 by dorasyo329 (全て見る)
- 【書評・紹介】『決断 生体肝移植の軌跡』 中村輝久 - 2023年9月17日
- 【書評・紹介】『休日のガンマン』 藤子・F・不二雄 - 2023年8月13日
- 【書評・紹介】『劇画・オバQ』 藤子・F・不二雄 - 2023年8月6日



















コメント
コメント一覧
まだ、コメントがありません
プライバシーポリシーが適用されます。