【書評・紹介】『隣人が殺人者に変わる時 加害者編 ルワンダジェノサイドの証言』 ジャン・ハッツフェルド

2023年2月10日インタビュー本,インタビュー・対談本,ドキュメンタリールワンダ

ルワンダ虐殺の加害者が語る
あの時何が起きていたのか

著者:ジャン・ハッツフェルド
訳:西京高校インターアクトクラブ

考えさせられる度
電子書籍 無し
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あらすじ

人はなぜ、ここまで残虐になれるのか ルワンダ・ジェノサイドの加害者たちが今、告発する
ある日を境に、フツ族は使い慣れたマチェーテ(ナタ)を手に、隣人であるツチ族の虐殺を始めた。家畜を屠殺するように、淡々と…。人はなぜこれほどまで残虐になれたのか。ルワンダジェノサイドの加害者たちの証言集。

かもがわ出版|隣人が殺人者に変わる時 加害者編 (kamogawa.co.jp)

書評

皆さんはルワンダをご存知でしょうか?

ルワンダは東アフリカに位置する小国です。
周囲を陸に囲まれた内陸国でありながらも、「アフリカの奇跡」、「被援助国の優等生」とも評される急激な経済成長を遂げ、現在はIT立国を志向しています。

尤も、多くの方はそういった一般情報よりも「ルワンダ虐殺」のあった国という印象が強いと思います。

本書はその「ルワンダ虐殺」のノンフィクション。
それも加害者、即ち虐殺に加わった側へのインタビューを元に書かれたものです。

まず申し上げておきます。
生半可な気持ちで読める本ではありません。

筆舌に尽くしがたいとはまさにこのこと。
言葉に表すのも惨たらしい虐殺の描写が記されています。

しかし一方で知っておくべきことであることは間違いありません。

覚悟がある方だけお読みください。

まずはルワンダ虐殺について簡単に。

ルワンダは元々フツツチという2つの近しい民族が住む地域でした。
しかし、ベルギーの植民地となり、ベルギーは円滑な支配のために少数派であるツチを支配階級に据え優遇しました。
その後独立やクーデターに伴ってフツの政権となり、ツチの反体制派との内戦(ルワンダ紛争)が勃発。
最終的に、アフリカの国々の仲介のもと「アルーシャ協定」が結ばれ、包括的な暫定政府の成立に合意しました。
しかし、和平協定の履行は中々進まず。

そんな中、1994年4月6日にフツの指導者であったハビャリマナ大統領が暗殺される事件が起こります。
これをきっかけに始まったフツによるツチ穏健派フツに対する虐殺がルワンダ虐殺です。
結果的に50万人から100万人の人々が犠牲になったと推計されています。

さて、本書はそのルワンダ虐殺において、加害者側、罪なき市民を殺した市民の証言をまとめたもの。
ルワンダ虐殺における特異的な点は、主力が軍ではなく市民だったこと。
市民が市民を殺したこと。

それまでそれなりに平和に暮らしていたフツツチ
それなのに何故フツの市民は武器・マチェーテを手に取り、ツチを殺し始め、殺し続けたのか。

もう一度言います。
読むには覚悟が必要です。

虐殺を題材とする本全てに言えることですが、あまりにも凄惨で、真っ当な倫理観を持つ人の多くは読んでいるだけで筆舌に尽くしがたい感情を抱くはずです。

ましてや、本書は加害者側の証言。
二度とこのようなおぞましい惨劇を起こさないために現代に生きる人が絶対に読んでおくべきと思う本ではありますが、一方で生半可な気持ちで読める本ではありません。

本書からのみ、この虐殺の原因を分析するのならば、扇動と集団心理になるでしょうか。
私が感じたのは、これもまた同調圧力なのではないかということ。
本質的な点で見ればいじめと変わらないと思うのです。

みんながやっている。だから自分も

そうして、少なくとも最初は受動的に虐殺に加わった人々は、感情が狂っていきます。壊れていきます。
それがまた次の虐殺を生む。

私には、本書を読んで抱いた疑問が1つあります。
それは、もし自分がこのような場面にいたとして、自分は虐殺に加わらないという選択ができたのかどうか。
決して加害者をかばうわけではありません。
単純な疑問として、自分は自分の正義を真っ当できたのだろうかと。

虐殺に加わらなければ、人を殺さなければ、自分まで殺されるかもしれない。
あるいは、大事な人にまで危害が及ぶかもしれない。
そのような状況、あるいはそこまでいかずとも、極めて強い同調圧力のかかる状況に自分がいたとき、自分は罪を犯さずにいられるのか。

人というものは、得てして自分に都合の悪いことは話さず、また、自分の都合の良いように話を作り変える生き物です。
ましてやこれは、加害者として罪に問われた人物達の証言。
すべてを鵜呑みにして良いか疑問が残ります。

しかし、私は少なくとも一握りの事実がこの本には含まれているように思います。

人類の歴史は血塗られたものです。
その事実は動かしようがありません。
しかし、これからの歴史は変えられます。これからの歴史を作っていくのは我々です。
二度とこのような惨劇を引き起こさないためにも読んでおくべき本であると思います。

覚悟を持ってお読みください。

単行本

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自称システムエンジニアのくせに、農学系の地方国立大に通うおかしな生き物。 ひつぎ教育研究所社長。 好物は恋愛小説と生物学、哲学。BL以外はなんでも読む雑食。 一応、将棋のアマ三段。