【書評・紹介】『赤ちゃんをわが子として育てる方を求む』 石井光太
特別養子縁組制度創設のきっかけとなった「菊田医師事件」
その当事者である菊田昇医師を主人公に描いた小説
| ストーリー | |
| 描写 | |
| 感動度 | |
| 考えさせられる度 | |
| 電子書籍 | 有り |
あらすじ
子をはぐくむのは血ではなく愛のつながり
赤ちゃんをわが子として育てる方を求む | 書籍 | 小学館 (shogakukan.co.jp)
1926年石巻で生まれた菊田昇は、母が経営する遊郭で幼少期を送り、遊女の悲哀を目の当たりにする。その後、東北大学医学部に進学。卒業後は、産婦人科医となり、望まぬ妊娠をした女性が子供を堕ろすことなく、子供を欲する夫婦の実子となるよう非合法な縁組みを始める。法を犯してでも小さな命を守ることを優先、多くの赤ちゃんの命を救うこととなる。ところが、その事実が新聞にスクープされ、世間を揺るがす事件に発展。
日本医師会からの処分、国会招致、家宅捜索など、幾多の試練にさらされ、それでも命を守るという信念を曲げることなく、国を相手に闘い続けた昇は、悲願の「特別養子縁組」制度を勝ち取った。
ノンフィクションの旗手・石井光太氏が取材を重ね、「赤ちゃんあっせん事件」の裏にある真実を描いた小説。
書評
菊田昇。
御存知でしょうか?
私が尊敬してやまない方の1人です。
この前、友人と話した時に知らないと言われ、少し愕然としました。
日本に生きる人は絶対に知っておくべき人であると私は思っています。
この菊田医師について知ることができるのが本書です。
まずは主人公・菊田昇医師について簡単に。
昭和後期-平成時代の産婦人科医。
菊田昇とは – コトバンク (kotobank.jp)
大正15年5月31日生まれ。昭和33年生地宮城県石巻市で開業。妊娠した未婚女性に母性保護,生命尊重の立場から出産をすすめ,約100人の新生児を子のない夫婦に実子として斡旋(あっせん)した。48年告発され,優生保護法指定医をとりけされる。事件をきっかけに62年実子特例法が制定された。平成3年8月21日死去。65歳。東北大卒。
簡単に言うと、現在の「特別養子縁組」制度が作られるきっかけとなった方です。
それ以前の養子縁組(普通養子縁組)では、戸籍に実親と義親が書かれます。
しかし、当時(今もですが)、未婚の母や養子に対する風当たりは強く、戸籍に残したくないという思いが一般的でした。
そのことが中絶、特に法律で定められている妊娠7ヶ月を超えた時点での堕胎に繋がっていました。
妊娠7ヶ月というと、赤子はかなり成長しています。
陣痛促進剤を使って体外へと出てきた嬰児が自発呼吸をしていることもあり、その場合は医師が自らの手で……ということもあったようです。
その現実をどうにかしたいと菊田医師が起こしたのが「菊田医師事件」。
堕胎を望む母親を説得し、産まれた子供を不妊に悩む夫婦に実の子として育ててもらう。
このために菊田医師は出生届を偽造しました。
そのために菊田医師は医師法違反、公文書偽造罪で有罪判決を受けることとなるのですが、この事件をきっかけに「特別養子縁組」の制度が誕生したのです。
その菊田医師の人生を描いたのが本書。
カテゴリに小説、伝記、ドキュメンタリーと一見矛盾したものを付けているのは
この物語は、実在の医師・菊田昇の人生に基づいたフィクションです。
赤ちゃんをわが子として育てる方を求む より
と書かれているため。
小説として評価は、よくまとまっているといった感じでしょうか。
なぜ菊田医師は事件を起こすに至ったのか。
その背景にある経験、人生がまるで一本の筋のように綺麗に描かれています。
そしてこれは本書というよりも、「菊田医師事件」について言えることなのですが、
法とは何かを読者に問いかけるものとなっています。
前述の通り、菊田医師のやったことは紛れもく犯罪行為です。
しかしその一方で、赤子の命を救ったこともまた事実です。
では、菊田医師の行為は褒められるべきものでしょうか。貶されるべきものでしょうか。
それ以前に、中絶は許される行為なのかという議論もあります。
2022年6月、アメリカの連邦最高裁は中絶は違憲である、との判決を下しました。
私自身は中絶は女性の権利であると考えています。
その一方で、反対派のいう赤子の命という意見も決して無視できるものではないと思っています。
この問題に答えがあるのかはわかりません。
しかし、だからこそ考え続けなければならないのだと思います。
1つの物語としてもとても心に響く本作ですが、
本作を読み、
望まない妊娠、中絶、養子縁組などについて改めて考えて頂きたいなと思い、この場で紹介しました。
これは決して昔の話ではありません。
今なお養子縁組制度をもっとより良いものにしようと、議論が行われています。
赤ちゃんポストや匿名出産など、現在進行形で議論が行われているものとも関係があります。
出自を知る権利についての議論も深まってきています。
この本を読み是非今一度、命について考えて頂きたいです。
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