【書評・紹介】『蜩ノ記』 葉室麟
藩史の編纂と十年後の切腹を命じられ幽閉された男
何を思い残された日々を生きるのか
| ストーリー | |
| 描写 | |
| キャラクター | |
| 感動度 | |
| 独自性 | |
| 電子書籍 | 有り |
| 他のメディア展開 | ラジオドラマ、実写映画 |
あらすじ
豊後羽根(ぶんごうね)藩の檀野庄三郎(だんのしょうざぶろう)は不始末を犯し、家老により、切腹と引き替えに向山村(むかいやまむら)に幽閉中の元郡(こおり)奉行戸田秋谷(とだしゅうこく)の元へ遣(つか)わされる。秋谷は7年前、前藩主の側室との密通の廉(かど)で家譜編纂(へんさん)と10年後の切腹を命じられていた。編纂補助と監視、密通事件の真相探求が課された庄三郎。だが、秋谷の清廉(せいれん)さに触れるうち、無実を信じるようになり……。凛烈(りんれつ)たる覚悟と矜持(きょうじ)を描く感涙の時代小説!
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受賞歴
第146回直木賞 受賞
書評
直木賞。それは小説家直木三十五の名を関する日本の文学賞の最高権威の一つ。それは多くの人の共感を呼ぶ作品を選ぶ賞。
この『蜩ノ記』はそんな直木賞を受賞した多くの人が共感できる作品です。
舞台は江戸時代、豊後(現在の大分県)にある架空の藩、羽根藩。
羽根藩の奥祐筆(藩主の文書作成などを担う秘書的な役職)を務めていた檀野庄三郎は不始末を起こし、切腹と引き換えに元郡奉行(郡村の民政を担う村長的な役職)で現在幽閉中の戸田秋谷の元に遣わされます。秋谷は前藩主の側室と密通したとして、家譜(藩の家系図、歴史書)の編纂と十年後の切腹を命じられており、 庄三郎は監視役などの役目を負っていました。
しかし、編纂の手伝いをしているうちに、秋谷が側室と密通をしたとは思えなくなってきて。
と、大まかには秋谷の密通事件の真実が徐々に明らかになっていく過程で、他にも事件が起きたりして・・・と言ったストーリーで、もうこれだけで面白いのですが、やはりこの作品の醍醐味はそこではなく、十年後の切腹を命じられ、自分の命の期限が刻一刻と迫ってくる秋谷の描写でしょう。
この秋谷、本当に清廉潔白以外に言い表せる言葉がないといった人間で、残された時間を粛々と家譜の編纂に捧げています。
では、この秋谷の清廉潔白さはどこから来たのか。
私は武士という存在?概念?といったところから来ているように感じました。
作者葉室麟先生が考える理想の武士像といったものが秋谷に投影されているのではないかと。
作中、忠義とは何か、武士とは何なのか、武士が持つべき覚悟とは何かといった問いや考えが度々出てきます。そして、秋谷が何を考え死を待っているのかが垣間見えます。
また、話のもう一つの要素として秋谷が命じられた藩史の編纂。編纂作業をしているうちに秋谷と 庄三郎は疑問に行き着き歴史に隠された藩の秘密へと迫っていくミステリー的な要素もあります。そしてこの件が秋谷の密通事件にも関わりがあることがわかってきて・・・。
こちらもこちらで面白いです。
最後に、この作品のタイトル「蜩ノ記」について。
この「蜩ノ記」は秋谷がつけている日記のタイトルから来ています。
その由来は
夏が来るとこのあたりはよく蜩が鳴きます。とくに秋の気配が近づくと、夏が終わるのを哀しむかのような鳴き声に聞こえます。それがしも、来る日一日を懸命に生きる身の上でござれば、日暮しの意味合いを込めて名づけました
蜩ノ記 32ページより
藩史の編纂と十年後の切腹を命じられ幽閉された男は何を思い残された日々を生きるのか。
是非お読みください。
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