【書評・紹介】『ソロモンの指環 動物行動学入門』 コンラート・ローレンツ

2024年8月5日エッセー・随筆,教養書,生物学コンラート・ローレンツ,日高敏隆

近代動物行動学はここから始まった。
と言っても過言ではない名著。
ノーベル賞受賞者の軽妙な語り口があなたを動物行動学の世界へと誘います。

読みやすさ
わかりやすさ
エピソード
電子書籍 有り
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あらすじ

孵卵器のなかでハイイロガンのヒナが卵から孵った。小さな綿毛のかたまりのような彼女は大きな黒い目で、見守る私を見つめ返した。私がちょっと動いてしゃべったとたん、ガンのヒナは私にあいさつした。こうして彼女の最初のあいさつを「解発」してしまったばかりに、私はこのヒナに母親として認知され、彼女を育てあげるという、途方もない義務を背負わされたのだが、それはなんと素晴らしく、愉しい義務だったことか……「刷り込み」理論を提唱し、動物行動学をうちたてた功績でノーベル賞を受賞したローレンツ博士が、溢れんばかりの歓びと共感をもって、研究・観察の対象にして愛すべき友である動物たちの生態を描く。

ソロモンの指環──動物行動学入門 | 種類,単行本 | ハヤカワ・オンライン (hayakawa-online.co.jp)

書評

タイトルの通り、動物行動学の入門書です。

コンラート・ローレンツ
御存知でしょうか?
私が尊敬してやまない科学者の1人です。

その業績は、近代動物行動学を確立したこと。
ローレンツ博士はそのことにより、ノーベル生理学・医学賞を受賞しています!
あの医学ばかりが受賞し、生物学が疎かにされている、ノーベル生理学・医学賞を、動物行動学で!

という話をいきなりされても、まあわかりませんよね(多分)。

まずは、動物行動学とはなんぞやということから。

と言っても、読んで字の如く。
動物行動学とは動物の行動を研究する学問です。

具体的な事例を挙げると、たとえば刷り込み
鳥の雛は、生まれて初めて見た動くもの、音を発するものを親と認識します。
これが「刷り込み」。

言葉で言ってもわかりにくいかもしれないので、動画をば。
ここではパトカーのラジコンを親だと刷り込ませています。

この刷り込みを著作によって世間へと知らしめたのがローレンツ博士

そして、その著作の1つが本書。『ソロモンの指環』です。

ちなみに、「ソロモンの指環」とはキリスト教の偽典の1つ。
『ソロモンの聖約』に出てくる、動物の話がわかるようになる指環のことです。

このタイトルの通り、本書においてローレンツ博士はまるで動物と話ができるかのような、面白い様々なエピソードを語っています。

ローレンツ博士が如何に動物を愛していたかがわかるエピソードの1つに、
自分の娘を檻に入れた、という話があります(正確には博士の妻の話ですが)。

ローレンツ博士の家にはそれはそれは沢山の動物がいます。
飼育していたもの、あるいは勝手に室内に入ってきたもの。

その動物たちが娘を傷つけないように、娘を檻に入れたという。

そんな話が沢山語られているのが本書です。

一方で、きちんと学術的な話もされています。
本書の魅力はそうした、面白いエピソードと動物行動学の取り合わせにあると思います。

最後にもう1つ、本書に出てくる話を。

本書では、アクアリウムの話が出てきます。
要は水槽でお魚を飼う話。

しかし、ローレンツ博士の話すアクアリウムは我々が思うものと違います。
たとえば、エアレーション(ブクブク)がありません。
ろ過装置もありません。

そんなので魚は生きていけるのかと思いませんか?
実は生きていけるんです。

タネは実に簡単。
自然界において、エアレーションもろ過装置も必要とせずに生物は生きているのだから、
その自然を水槽内に再現してやれば良いというもの。

この方式は、バランスドアクアリウムやそれこそ博士の名前をとってローレンツアクアリウムと呼ばれています。

化学的な話をすれば水槽内において窒素循環を成立させるということなのですが、本筋とはずれるので詳細はまた別の機会にでも。
ちなみに、私の研究テーマだったりします。

そんなこんなで、動物行動学の話を自身のエピソードと共にこれでもかと収録したのが本書です。

動物が好きな人はもっと好きに。
そうでない人も動物に興味をきっかけに成り得る本であると思います。

是非お読みください!

文庫本

単行本

2006年版

1987年版

1975年版

電子書籍

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自称システムエンジニアのくせに、農学系の地方国立大に通うおかしな生き物。 ひつぎ教育研究所社長。 好物は恋愛小説と生物学、哲学。BL以外はなんでも読む雑食。 一応、将棋のアマ三段。