【書評・紹介】『分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議』 河合香織
一斉休校、緊急事態宣言、アベノマスク8割削減
その時、専門家会議は何をしていたのか
日本の新型コロナ対応を明らかにすると共に、科学者と政治家の関係を考えさせられるノンフィクション
| 読みやすさ | |
| 考えさせられる度 | |
| 電子書籍 | 有り |
あらすじ
クラスター対策に3密回避。未知の新型コロナウイルスに日本では独自の対策がとられたが、その指針を描いた「専門家会議」ではどんな議論がなされていたのか? 注目を集めた度々の記者会見、自粛要請に高まる批判、そして初めての緊急事態宣言……。組織廃止までの約四カ月半、専門家たちの議論と葛藤を、政権や行政も含め関係者の証言で描くノンフィクション。
分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議 – 岩波書店 (iwanami.co.jp)
受賞歴
Yahoo!ニュース | 本屋大賞 2021年ノンフィクション本大賞 ノミネート
書評
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。
あの日から私達の生活は様変わりしました。
そんな中、颯爽と現れたのが「専門家会議」。
脇田隆字座長、尾身茂副座長。
それ以前は一部の界隈でしか知られていなかったものの、もう今となっては知らない人はいないであろう有名人。
科学者達の言葉を聞き、従い、頑張ろうと思われた方も多いのではないかと思います。
しかし、自粛生活が長引くにつれ、徐々に徐々に専門家会議への批判も高まっていきます。
一向に目安が示されない緊急事態宣言の解除基準。
感染拡大は若者のせいだと言わんばかりの発言(私は1人の若者としてそうは思いませんでしたが)。
その時、専門家会議は何をしていたのか。どう動いていたのか。
新型コロナウイルスという突如現れた敵に科学者、政治家、官僚がどう立ち向かったのかを描いたノンフィクションです。
登場人物はかなりの人数に登るのですが、主要登場人物はこの4人であると思います。
「専門家会議」
・脇田隆字 座長
・尾身茂 副座長
・押谷仁
・武藤香織
脇田氏、尾身氏はもう説明する必要もないでしょう。
押谷氏は東北大学の教授。専門はウイルス学、公衆衛生学。
武藤氏は東京大学の教授。専門は医療社会学。
この4人の占める割合が大きいです。
そして、ノンフィクション作品ということもあって、我々の知らなかったことが次々と語られていきます(少なくとも私は知らなかったことが)。
例えば、人手不足がたたって、厚労省に院生や学部生までもがボランティアとして詰めていたという話。
専門家会議から厚労省への要望であるにも関わらず、事前に厚労省のチェックが入り文面の修正が行われていたという話。
一斉休校という重要な話が専門家会議抜きで決められていたという話。
大阪・兵庫の往来自粛要請に絡む、英断とも呼べるであろうスタンドプレー。
本書の良い点は、そうした出来事をできるだけ著者の主観を排し、事実だけを淡々と書き連ねようとしているところにあると思います。
そして私がこの本を読んで感じたことは、科学者・政治家・官僚の関係性。
本来はこの三者がスクラムを組んで事態に当たらなければならないにも関わらず、情報伝達の不備、結果として足の引っ張り合い、不明な責任の所在といった問題が生じていたのだとわかります。
恐らく多くの当事者が最善を尽くそうとしたのでしょう。
しかし、誰かが最善を尽くした結果が誰かへの妨害となるのは当たり前。
結局のところ、3者が1つの組織となっておらず、その3者に対してリーダーシップを発揮し得る人物が誰一人としていなかったのだなと、私は読んでいて思いました。
ただ一方で、新型コロナウイルスによる死者数などの「結果」を鑑みるに、外国との比較の上では明確な「失敗」であると言えないことは確かです(2022年7月現在)。
要は、もっとできたことがあったのではないかという話です。
一方で、本書を読んで国は最善を尽くしたと考えられる方もおられるでしょう。
本書に描かれた事実をどう解釈するのか。それは個人によって異なるはずです。
その上で明確に言えることは、新型コロナウイルス対応にかかる国の対応を知ることで、
もし次のパンデミックが襲ってきた時に自分たちはどうすれば良いのか考えることが重要であるということです。
もちろん私たちは専門家や官僚を選べるわけではありません。
しかし、選挙権を行使することで政治家を選ぶことはできます。
世論の力で国を動かすこともできます。
新型コロナウイルス対応を知り、自分の中で考えるという点において、本書は間違いなく良書です。
是非お読みください!
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