【書評・紹介】『シャイロックの子供たち』 池井戸潤
主演・井ノ原快彦でドラマ化。
主演・阿部サダヲで映画化。
池井戸潤が描く連作短編集!
イラスト:木内達朗
| ストーリー | |
| 描写 | |
| キャラクター | |
| 予想を裏切られる度 | |
| 独自性 | |
| 電子書籍 | 有り |
| 他のメディア展開 | テレビドラマ、実写映画 |
あらすじ
支店の中に“怪物”がいる——
文春文庫『シャイロックの子供たち』池井戸潤 | 文庫 – 文藝春秋BOOKS (bunshun.jp)
ある町の銀行の支店で起こった、現金紛失事件。女子行員に疑いがかかるが、別の男が失踪……!? “たたき上げ”の誇り、格差のある社内恋愛、家族への思い、上らない成績……事件の裏に透ける行員たちの人間的葛藤。銀行という組織を通して、普通に働き、普通に暮すことの幸福と困難さに迫った傑作ミステリ。解説・霜月蒼
書評
経済小説を書かせたら右に出る者はいない。
池井戸潤の経済小説、ミステリーです。
舞台は、大田区にある東京第一銀行長原支店。
東京第一銀行。
池井戸潤の他作品を読まれたことがある方はおわかりだと思いますが、いつもの舞台です。
『花咲舞が黙ってない』の花咲舞の勤務先。
『半沢直樹シリーズ』の東京中央銀行の前身(旧T)。
その長原支店で起こった現金紛失事件。
そしてそれをきっかけに明らかになる支店の秘密。
それを全10話、10人の主人公の短編小説から描いていくという連作短編集です。
ちなみにタイトルとなった『シャイロックの子供たち』。
ここでいう「シャイロック」とは、
シェイクスピア、『ヴェニスの商人』に登場する強欲な金貸しのことです。
第一話 歯車じゃない
主人公は長原支店副支店長・古川一夫。
ページ数は35ページ。
よくいる?昭和の前時代的上司な古川。
成果、そして昇進に囚われ、部下を叱咤しまくる。
しかし、その思いがある事件を引き起こす。
第二話 傷心家族
主人公は長原支店融資課次席・友野裕。
ページ数は44ページ。
幸せな家庭と逃してしまった出世への道。
どうにかして海外勤務を。
融資実績を作るために奮闘するサラリーマンの話。
第三話 みにくいアヒルの子
主人公は営業課相談グループ、北川愛理。
ページ数は44ページ。
父が倒れ、妹達の学費を稼ぐために贅沢もせず頑張る日々。
しかし、彼氏ができてから色々と入用に。
そんな折、現金100万円の紛失事件が起こる。
行員総出で探しても見つからず、私物のチェックをすることに。
しかし、そのチェックで。。。
やっとミステリーらしくなる1話。
第四話 シーソーゲーム
主人公は業務課課長・鹿島昇。
ページ数は21ページ。
部下である課長代理・滝野真は優秀な成績を出している。
しかし、もう1人の課長代理・遠藤拓治はなかなか思ったような成果が出ない。
副支店長・古川らから猛烈なプレッシャーがかかる中、遠藤は精一杯努力し、鹿島はそれを見守る。
そんな折、遂に遠藤が新規開拓に成功するが……?
ちょっと怖いお話。
第五話 人体模型
主人公は東京第一銀行人事部・坂井寛。
ページ数は21ページ。
坂井が読んでいるのは、とある行員の経歴。
その男の人生から見えてくるものとは……?
第六話 キンセラの季節
主人公は長原支店融資課課長代理・竹本直樹。
ページ数は43ページ。
行方不明となった行員のピンチヒッターとして営業課相談グループに赴くことに。
渋々行方不明となった前任者の業務を引き継ぐが、前任者の人となりを知るうちにある一つの真実へとたどり着く。
第七話 銀行レース
主人公は東京第一銀行検査部次長・黒田道春。
ページ数は35ページ。
検査の対象となるのはもちろん長原支店。
今まで示唆されてきた様々な事実が遂に白日の下に。
しかし、物事が思い通りに進むとは限らない。
第八話 下町蜃気楼
主人公は融資課の新人・田端洋司。
ページ数は37ページ。
ろくでもない上司達の元、働く田端。
そんな折、とある取引先の不自然な点に気がつく。
第九話 ヒーローの食卓
主人公は業務課課長代理・滝野真。
ページ数は23ページ。
出世街道まっしぐらの優秀な成績。
幸せな家庭。
物語の答え合わせが行われる物語。
第十話 晴子の夏
主人公は長原支店で働くパート社員・河野晴子。
ページ数は31ページ。
長原支店で起きた事件と自身の過去。
そんな彼女は、いろいろなことを見聞きするうちに、物語の隠されたもう1つの真実にたどり着く?
総評
それぞれの完成された短編小説が集まることで、もう1つの大きな物語となる。
成功すればとても面白い連作短編集の形の1つ。
それが意図されていることはわかるのですが、私はその目論見が成功しているようには思いませんでした。
特に1話と2話。
短編集の最初の話は、その短編集の世界に読者を引き込むという意味で非情に重要なものであると私は思います。
物語全体の起承転結の起に相当する部分でもあるわけですし。
しかし、本作はそこが少し弱くないかなと。
読んでいて思ったのは起に相当する部分はむしろ3話のように思います。
その3話を描くにあたって、環境を整えるための1話2話だと思うのですが、そのことばかりが重視され、1つの短編小説としてのストーリー性が弱いように思いました。
また、起承転結の結の部分。
9話と10話。
9話で結末、10話でもう1つの結末を描くあたり、とても面白いです。
面白いのですが、なんかぼやかされて終わったなあと。
はっきり言ってこれは個人個人の好みだと思います。
こういう終わり方をするミステリーが好きな人もいれば、何かもやもやする読者もいると思います。
私は後者だったのでやや低評価でした。
一方で、3話から9話は面白かったです。
特に4話。
1つの短編小説としてもそうですし、全てを読み終わってから気がつく、その話自体が全体の中で持つ役割。
オススメです。
また、7話も面白かったです。
順当に進むと思っていた物語が、まさかの結末。
予想を裏切られる展開、大好物です。
主演・井ノ原快彦でドラマ化。
主演・阿部サダヲで映画化。
池井戸潤が描く連作短編集。
是非お読み下さい!
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