【書評・紹介】『女子大生風俗嬢 性とコロナ貧困の告白』 中村淳彦

2023年2月10日SDGs・持続可能な社会を考える上で読んでおきたい本,インタビュー本,インタビュー・対談本,ドキュメンタリー新型コロナウイルス感染症

若者と教育、貧困
学生へのインタビューを元に現代社会の現実を明らかにする一冊

著者:中村淳彦

読みやすさ
考えさせられる度
電子書籍 有り
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あらすじ

コロナ禍での“最大の被害者”は大学生だった! 中村淳彦氏が贈る「貧困シリーズ」の最新作は大学生がテーマ。コロナ禍でバイトを奪われた学生たちは、いかにしてこの“地獄モード”を切り抜けているのか。体を売るしかない女子大生たちが告白する悲惨な現状。オンライン授業になっても学費を下げない呆れた大学の内情も!

女子大生風俗嬢 性とコロナ貧困の告白 中村 淳彦(著/文) – 宝島社 | 版元ドットコム (hanmoto.com)

書評

大学に通うための学費を所謂「風俗」によって稼いでいる学生への取材を元にしたノンフィクションです。
なお、副題にコロナとついていますが、主たる内容はコロナ禍の風俗業ではなく、学生の風俗業です。

本書に書かれている学生はコロナ禍で進学した、在学している人々。

ちなみに今この書評を書いている私もコロナ禍に進学した学生。
本書に登場する学生達と同い年ないしは同年代の2001年生まれです。

本書の構成は全六章。
とりあえず章題を並べてみます。

第一章 毒親チルドレン
第二章 スカウトされた女たち
第三章 最底辺風俗嬢
第四章 性を売るエリート学生
第五章 パパ活女子たちの生存戦略
第六章 ハダカになる母親たち

章題から想像したことがそのまま書かれていると思って大丈夫です。

そのような内容が書かれている本書ですが、私は大きく3つに分類できると思いました。

1つ目は、家庭環境の問題。
なぜ学生は風俗で働くほど貧困なのか。
貧困学生が生まれる原因とは。

少子高齢化、就職氷河期世代の親たち、所謂「親ガチャ」。
原因を挙げれば枚挙に暇がありません。

ニュースでよく報じられ、公民などの教科書などでも触れられているこれらの事象。
しかし、その結果として生じている本書で述べられているような実態は中々知る機会がありません。
そうしたある種、社会の闇とも言えるような現状を知ることのできる本です。

2つ目は、日本の教育の問題。
大学全入時代と呼ばれるようになって久しい日本の教育。
そして最近になってやっと表で語られるようになった奨学金制度の抱える問題。

本書で述べられているのは主に後者の奨学金の問題ですが、私自身は前者の現状にも思考が及びました。

3つ目は、学生風俗嬢の現実。
何故風俗に手を出してまで大学で学びたいのか。何を学びたいのか。
夢のためにという学生もいます。

しかし、風俗で働いているうちにその夢を見失ってしまった学生もいたりなど。
誤解を恐れずに言えば、未来ある若者が風俗で働くことによって壊れていく様子が読んでいてわかります。

そんな本書において、私が特に印象に残ったのが男子学生の話です。
風俗で働くのは決して女性だけではありません。

女性を顧客とする風俗もありますし、そちらで働く学生のことも述べられていますが、
私が印象に残ったのは同性向け風俗で働く男子学生。
所謂、ゲイ向け風俗、売り専と呼ばれるものです。

本書に取り上げられている学生は同性愛者ではなく異性愛者。
胆振東部地震で実家からの仕送りが滞り、学費のため風俗で働く学生です。

私が本書を読んでいて思ったのが、
彼ら、彼女らと私は一体何が違ったのか。
2000年前後に生まれ、現在大学に通っている学生という点では同じであるにも関わらず、どこでその差が生まれたのか。

結局は、「親ガチャ」。
親の収入や貯蓄に行き着くのでしょうが、
能力や意欲に関係なく、どの家庭に生まれたかで大きく変わってしまう現状。

軽々なことは言えませんが、色々と思うところがありました。
尤も、「同情するなら金をくれ」と言われると返す言葉もないのですが。

2022年現在、本書に関係することで話題となったことが2つありました。

1つはコロナ禍と風俗。
休業要請による補償金は風俗店にも払われるべきか。
風俗で働く人々の中には、確定申告をしていない人もおり、議論が沸き起こりました。

もう1つは、学生の貧困。
現在の日本の制度では、生活保護を受給しながら大学に在籍することは出来ません。
その現状を改めて欲しいという署名運動がありました。

学生が大学で学ぶために体を売る。
この現状を知って、読んで、あなたは何を思われるでしょうか。

学費のために風俗で働く学生を扱ったノンフィクション。
どうぞ、お読みください。

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自称システムエンジニアのくせに、農学系の地方国立大に通うおかしな生き物。 ひつぎ教育研究所社長。 好物は恋愛小説と生物学、哲学。BL以外はなんでも読む雑食。 一応、将棋のアマ三段。