【書評・紹介】『のぼうの城』 和田竜

2022年8月19日小説,戦記小説,本屋大賞,バトル・アクション,歴史小説和田竜,映画(実写)

野村萬斎主演で実写映画化!
でくのぼう率いる3000と石田三成率いる2万による「忍城の戦い」を題材に、和田竜が描く圧巻の歴史小説。

のぼうの城の表紙
(引用)
著者:和田竜
装画:オノ・ナツメ

ストーリー
描写
キャラクター
感動度
独自性
電子書籍 有り
他のメディア展開 コミック、実写映画、オーディオブック
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あらすじ

戦国期、天下統一を目前に控えた豊臣秀吉は関東の雄・北条家に大軍を投じた。そのなかで最後まで落ちなかった支城があった。武州・忍城。周囲を湖で取り囲まれた「浮き城」の異名を持つ難攻不落の城である。秀吉方約2万の大軍を指揮した石田三成の水攻めにも屈せず、僅かの兵で抗戦した城代・成田長親は、領民たちに木偶の棒から取った「のぼう様」などと呼ばれても泰然としている御仁。城代として何ひとつふさわしい力を持たぬ、文字通りの木偶の棒であったが、外見からはおおよそ窺い知れない坂東武者としての誇りを持ち、方円の器に従う水のごとき底の知れないスケールの大きさで、人心を掌握していた。武・智・仁で統率する従来の武将とは異なる、新しい英傑像を提示したエンターテインメント小説。

のぼうの城 | 小学館 (shogakukan.co.jp)

受賞歴

第29回 城戸賞 受賞(「脚本『忍ぶの城』として」)
第139回 直木賞 ノミネート
第6回 本屋大賞 2

書評

時は戦国時代末期、1590年。
織田信長亡き後、天下人として歩み始めた豊臣秀吉の前に最後に立ちはだかる小田原北条氏。
この豊臣秀吉と後北条氏の戦い、所謂小田原征伐に伴って発生した「忍城の戦い」を題材とした歴史小説です。

舞台は忍城のある武蔵国(現在の埼玉県行田市)。
大将・成田長親ら篭城側3000人と石田三成、大谷吉継らを始めとする攻城側2万人の戦いを双方の立場から描きます。

(上巻の)表紙に描かれているのがこの成田長親。
本作の主人公とも言える存在であり、そしてタイトルの「のぼう」本人でもあります。
その由来はあらすじの通り「でくのぼう」。
しかし、でくのぼうとは到底思えない人心掌握力を持っており…。
この強いわけでも知略に秀でたわけでもない総大将の戦いを描いているところが本作の特筆すべき点。

そんなのぼう様と相対するのが石田三成。
秀吉の家臣であり、後に関ヶ原の戦いで敗れる御仁。
作品によって描き方が180度変わる人物ですが、この作品は双方から描くといってもやはり篭城側に重きを置いていることもあり、「理財には長けておるが軍略には乏しい」(秀吉評)、「果断なまでの正義漢」(吉継評)など、正義に厚いもののある種残念な人物として描かれます。

この他にも篭城側では正木丹波、酒巻靭負、柴崎和泉守、甲斐姫など。
攻城側では大谷吉継、長束正家など個性のある人物たちが登場します。
特に甲斐姫は恋愛周りの話もあり、これも本作の見所の一つです。

一方で「忍城の戦い」にのみ焦点を絞った歴史小説であるがために、キャラクターは魅力的でありながらも、そのバックグラウンドの描写というかが不十分に感じました。
文量の関係から仕方ないにしても、せめて成田長親の過去、でくのぼうと呼ばれることへの感じ方、その人心掌握力の由来などは知りたかったなと。
しかし、そうすると焦点が「忍城の戦い」からぶれてしまうなどデメリットもあることは理解できるので難しいところ。
ですが一応その部分はやや不満に感じました。

その上で、総評としては間違いなく傑作です。
テンポの良い描写、終盤への盛り上げ方、そしてクライマックス。
とてもうまくまとまっていて、読者を物語の世界に引き込み、感動させる。
一つの戦いに焦点を絞った時代・歴史小説の中では一番の作品であると思います。

3000vs2万の無謀な戦いを描く。
第6回本屋大賞第2位にして惜しくも直木賞受賞を逃した感動の歴史小説!
是非お読みください!

単行本

文庫本

電子書籍

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自称システムエンジニアのくせに、農学系の地方国立大に通うおかしな生き物。 ひつぎ教育研究所社長。 好物は恋愛小説と生物学、哲学。BL以外はなんでも読む雑食。 一応、将棋のアマ三段。