【書評・紹介】『過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか? ローマ法王に米を食べさせた男』 高野誠鮮

2022年8月19日自伝,エッセー・随筆,教養書,伝記,ビジネス書,ドキュメンタリーテレビドラマ,石川

限界集落の村おこしを成功させ、ローマ法王に米を食べさせるまでに至った公務員の実録。

読みやすさ
考えさせられる度
専門性
電子書籍 有り
他のメディア展開 テレビドラマ化(「ナポレオンの村」原案として)
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あらすじ

過疎高齢化により18年間で人口が半分に落ちこんだ“限界集落”の石川県羽咋市の神子原地区を、年間予算60万円で、わずか4年間で立ち直らせた“スーパー公務員”・羽咋市役所職員の高野誠鮮氏。神子原地区の米をローマ法王に献上することでブランド化に成功させる。農家が株主となる直売所を作って、農民に月30万円を超える現金収入をもたらす。空き農家を若者に貸すことでIターンを増やす。アメリカの人工衛星を利用して米の品質を見抜く。『奇跡のりんご』のりんご農家・木村秋則氏と手をむすんで、JAを巻きこんでの自然栽培の農産物つくりを実践し、全国のモデルケースとなるなど、その活躍ぶりは際立っている。本書では同氏が手がけたさまざまな「村おこし」プロジェクトを紹介。これを読むと、仕事のアイディア力が増す、商売繁盛のヒントになる、そしてTPPにも勝つ方法を学ぶこともできる!

『ローマ法王に米を食べさせた男  過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか?』(高野 誠鮮)|講談社BOOK倶楽部 (kodansha.co.jp)

書評

過疎化した村での地方創生に挑んだ公務員が実体験を元に著したビジネス書です。
この本を原案に「ナポレオンの村」というテレビドラマ化も作られました。
主演は唐沢寿明さんです。

舞台は石川県羽咋市にある神子原みこはら地区。65歳以上の住民が半数を越える限界集落です。

少子高齢化の日本において、この限界集落は喫緊の課題としてよく取り上げられています。
この限界集落の再生に挑み、様々な施策によって地域を再生していく内容です。

ただ、まず一つ注意していただきたいのは、本書はビジネス書であって科学書ではありません。
本書では科学とはとうてい言えないようなことがあたかも事実であるかのように書かれている点が存在します。
特に農薬と化学肥料について、本書は強く批判しています。

例えば、「輸入植物は放置すると腐るが、自然栽培のものは腐らず枯れる。食べてはいけないものが腐る。」や「化学肥料を使って育てたから体に悪い。」、「余計なものを食べるから病気になる。」など。

これらは全て筆者の主観・主張であって、本書の中でその論拠となる研究が示されているわけではありません。過去に実際、一部の農薬・化学肥料が人体に悪影響を与えることがわかり規制されたことはありますが、全ての農薬や化学肥料が悪影響を与えるとは断言できません。
本書で語られる、農薬・化学肥料と健康に関する問題は非常に誤解を招きやすいものです。

念のため、消費者庁による農薬の解説ページのURLを貼っておきます。

農薬や化学肥料の安全性について議論があることは事実です。
専門家の間で意見が割れていることも事実です。
しかし、なんにせよこれは医学・科学の話であり、きちんとした実験・研究に基づいて議論されるべきものであって、本書のように明確なエビデンスを提示せず一方的に読者に主張を植え付けるようなことは厳に慎むべきであると私は考えます。
読者の皆様には是非とも、正しい情報・論拠による賛成派、反対派の主張を聞いた上で、ご自身で判断していただきたいと思います。

以上のように、本書はビジネス書であって科学書ではないことを今一度強調させて頂きます。

ということを差し引いたとしても、ビジネス書としてはとても良い書だと思います。

ローマ法王に米を献上するという表題にもなっているブランド戦略の他にも、UFOを使った町おこしや若者を呼ぶ施策、広報戦略など地方創生の一つの解決策が示されるとともに、広報戦略や考え方など普通のビジネスにも活かせることが書かれており、とても興味深い内容となっています。

特に興味深いところが、農家・行政そしてJA(農協)の関係性や村社会の実態がそのまま語られているところです。
地方創生などの施策が机上の空論とならないためには、こうした実態を知ることが重要だと思います。

限界集落の村おこしを成功させ、ローマ法王に米を食べさせるまでに至った公務員の実録。
唐沢寿明主演でテレビドラマ化も。
地方創生を考える上で読んでおきたい本です。
是非お読みください。

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自称システムエンジニアのくせに、農学系の地方国立大に通うおかしな生き物。 ひつぎ教育研究所社長。 好物は恋愛小説と生物学、哲学。BL以外はなんでも読む雑食。 一応、将棋のアマ三段。