【書評・紹介】『なぜ、世界はルワンダを救えなかったのか PKO司令官の手記』 ロメオ・ダレール

2022年8月19日自伝,国際政治学,SDGs・持続可能な社会を考える上で読んでおきたい本,エッセー・随筆,多様性社会の実現を考える上で読んでおきたい本,教養書,政治学,伝記,ドキュメンタリー,歴史映画(実写),ルワンダ

50万~100万人の市民が殺されたと推計されるルワンダ虐殺
そこには国連のPKO部隊もいた
なぜ彼らは虐殺を止められなかったのか
PKO司令官による手記

著者:ロメオ・ダレール
訳:金田耕一

読みやすさ
考えさせられる度
電子書籍 有り
他のメディア展開 映画、ドキュメンタリー映画
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あらすじ

100日間で80万人が虐殺された。それも多くはマチェーテと呼ばれる山刀で。なんと数ヶ月前から、そこには国連PKO部隊がいて、危険を察知していた。しかし、彼らは手を拱いて傍観するしかなかった。PKO部隊の司令官自身が痛恨の思いで綴る惨劇の顛末。

なぜ、世界はルワンダを救えなかったのか Beardsley, Brent(著) – 風行社 | 版元ドットコム (hanmoto.com)

受賞歴

2003 Shaughnessy Cohen Award for Political Writing 受賞
(2003年ショーネシー・コーエン政治執筆賞)

2004 Governor General’s Award for nonfiction 受賞
(2004年カナダ総督文学賞ノンフィクション部門)

書評

1994年に起きたルワンダ虐殺。
その当時、国際連合ルワンダ支援団(UNAMIR、PKO)の司令官として現地にいたにも関わらず、虐殺を止めることが出来なかったロメオ・ダレール氏の手記です。

まず一言言っておかなければならないのは、これはあくまで著者の主観に基づいて描かれたものであるということ(手記である以上当然ですが)。
そして、ルワンダ虐殺について彼も批判の対象になっているということ。

即ち、ルワンダ虐殺の現場にいた人物の手記として読むべき本であり、ルワンダ虐殺について知りたいということであれば、その他の虐殺について書かれた書籍と共に読むべきということです。

そして翻訳にもやや問題があります。
訳者の金田耕一氏もあとがきで述べられていますが、結果的にこの長い手記を1人で翻訳することとなり、また専門外の用語も登場することで不適切な語句・表現があるかもしれないということ。
私が1回読んだだけでも明らかな誤字脱字が散見されました。

もし英語、フランス語がわかるのであれば、原書を読まれた方が良いかもしれません。

その上でまずはルワンダ虐殺について簡単に。

ルワンダは元々フツツチという2つの近しい民族が住む地域でした。
しかし、ベルギーの植民地となり、ベルギーは円滑な支配のために少数派であるツチを支配階級に据え優遇しました。
その後独立やクーデターに伴ってフツの政権となり、ツチの反体制派との内戦(ルワンダ紛争)が勃発。
最終的に、アフリカの国々の仲介のもと「アルーシャ協定」が結ばれ、包括的な暫定政府の成立に合意しました。
この和平を支援するために設立されたのが国際連合ルワンダ支援団(UNAMIR)であり、著者がその司令官となります。
しかし、和平協定の履行は中々進まず。
そんな中、1994年4月6日にフツの指導者であったハビャリマナ大統領が暗殺される事件が起こります。
これをきっかけに始まったフツによるツチ穏健派フツに対する虐殺がルワンダ虐殺です。
結果的に50万人から100万人の人々が犠牲になったと推計されています。

本書では、まず著者の簡単なこれまでの人生が語られた後、UNAMIR司令官としての経験が語られます。

邦題の通り「なぜ、世界はルワンダを救えなかったのか」が明らかになる一冊です。
各国の利害、足りない人材と物資、聞き入れられない警告。
実名と共にその現実が明らかとなります。

その中には原題である「Shake Hands with the Devil」、「悪魔と握手する」のように、実際に悪魔との握手と比喩できる場面なども描かれます。

もちろん、ルワンダ虐殺を扱う本ですから、虐殺の口にするのも憚られるおぞましい描写もあります。
虐殺の後に著者がPTSDを発症し、自殺を図ったと言えばその程度は理解して頂けるかと思います。
しかし、これが虐殺です。現実に起こったことです。

私の感想を言うのであれば、この本は国際社会が救うことの出来た80万人の市民を救わなかった事実を記したものです。
その国際社会の中にはもちろん日本も含まれます。

PKOや自衛隊、国際社会の中において日本が果たすべき役割などについては様々な議論がありますし、私自身も確固とした持論がありますが、それをこの場で述べるつもりはありません。

しかし、PKO、国際連合平和維持活動について議論する前には絶対に読んでおくべき本です。
これを読まずして行われる議論に価値はないと言っていいほどの書籍です。

ルワンダPKOを指揮した司令官
ルワンダ虐殺を防ぐことのできなかった司令官の手記。
是非お読みください。

単行本

本書が失敗したPKOとするならば、こちらは成功したPKO。
カンボジアPKO日記』もぜひ。

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自称システムエンジニアのくせに、農学系の地方国立大に通うおかしな生き物。 ひつぎ教育研究所社長。 好物は恋愛小説と生物学、哲学。BL以外はなんでも読む雑食。 一応、将棋のアマ三段。