【書評・紹介】『奥山ケニチ短編集 めくれる思春期』 奥山ケニチ

2022年12月11日中学生(青春),漫画,高校生(青春),青年漫画,青春漫画,短編集奥山ケニチ

『ワンナイト・モーニング』の奥山ケニチが描く、思春期の「感情」を切り取った物語集

著者:奥山ケニチ

ストーリー
キャラクター
ノスタルジー
独自性
電子書籍 有り
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あらすじ

磯部くんが死んだ。エスカレーターで女性の下着をのぞきこみ、警備員に見つかり逃げた拍子に転げ落ちたらしい。階段下から見える一瞬のパンチラのロマンを共有する男子高校生2人の青春ストーリー「磯部くんのパンツ」(モーニング新人賞受賞)他奥山ケニチ珠玉の短編読み切り集!

奥山ケニチ短編集 めくれる思春期( 奥山ケニチ ) | 少年画報社 (shonengahosha.co.jp)

書評

ワンナイト・モーニング』で知られる奥山ケニチによる短編集です。

キーワードは「思春期」、「青春」。
いわゆる「多感な時期」と称される年代。
よく「恋愛」や「性」ばかりが取り上げられますが、「青春」はそれだけではありません。
そんな思春期の「感情」の場面を切り取った物語集です。

磯辺くんとパンツ

「磯部くんが死んだ」から始まる短編。
死因は「エスカレーターで女性の下着を覗き込み、逃走し、転落」

主人公は磯部くんことをよく知らない。
しかし、何も知らなかったわけではない。

性への興味と友情と呼べるものかもわからない友情。
本音と建前という話にもつながるかもしれない物語。

舞い上がれ思春期

幼い頃は常に本音で話せていたのに、成長するに連れどんどん建前が増えていって。
愛想笑いが身に付いてしまった少女とそんな少女に話しかけられない少年。

でも、その一歩を踏み出すことができれば、なにか変わるかもしれない。
そんな物語。

ブルースプリング・ミルキーウェイ

中学3年、受験生。
現実的な進路か、非現実的な夢か。

一歩踏み出す勇気と、自分たちの現実。

少年よ大志を抱けとはよく言ったもの。
落ちまで含めて、何か昔を思い起こせる短編。

たんぽぽ

離婚した父と母。
母の新しい恋人。
自分にはどうすることもできない少年の無力さを描いた短編。

コマの外が黒色で重さを感じさせる。
少年はこれから先、どう生きて行くのだろうかと考えさせられる物語。

ボーイミンツパンツ

写真部に所属している少年。
しかし、ひょんなことから同級生のパンチラを撮ってしまって……。

自分らしさとは何かを考えさせられる思春期のお話。

老人と海、で浮かぶ

何やら哲学的なタイトル。
内容はその名の通り「老人と海、で浮かぶ」。

いじめられている少年。
ある日、突飛な行動をする老人と海で出会う。

果たして老人の言葉は意味をなししていたのか。
最後まで読むとよくわからなくなる。
しかし、大事なのはその言葉をどう受け取るか。

そんな風に読んでいて感じました。

F君の記憶

ふとした時に思い出す人はいませんか?

主人公はふとした時に、小学校の同級生だったF君を思い出す。
F君はいじめられていた。
自分を含め、止める人はいなかった。

よく聞く「いじめられた方はずっと忘れない」という言葉。
でも、時に加害者もその十字架を忘れられない場合もある。

幼い頃の過ち、後悔、そして。
ふとした時に思い出すのか、それとも忘れられないのか。
過去の自分と向き合いたい短編。

夜勤のきれい。

主人公は夜勤のコンビニバイトをしている女の子。
そして、そのコンビニを利用する「や」のつく人。

生きる世界が違う、ふつうは関わり合わないはずだった2人。

さて、「綺麗」とはなんでしょう。
よく「美しい」とも言いかえられますが、
よく語られるのは「表面的な美しさ」と「本質的な美しさ」。

どちらも美しいものに変わりはありませんが、
本質的な美しさは忘れ去られがち。

あるいは、なぜ人は「美しい」という感情を共有できるのか。
プラトンの言う「美のイデア」は本当に存在するのか。

違う世界を生きる2人が出会ったらな物語でもありますし、
そういった「美」と「哲学」といった話にも読める作品です。

総評

どちらかというと「邪道」な作品であると思います。
どの作品も基本的に重ため。

でも、何か自分と重なることがあるはず。
誰もが一度は抱えたことがあるかもしれない、そんなお話をまとめた短編集であるように思います。

筆者の『ワンナイト・モーニング』は性と愛を題材とした作品。
こちらはそのワンナイト・モーニングと対をなすように思える作品です。

是非お読みください!

単行本

電子書籍

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自称システムエンジニアのくせに、農学系の地方国立大に通うおかしな生き物。 ひつぎ教育研究所社長。 好物は恋愛小説と生物学、哲学。BL以外はなんでも読む雑食。 一応、将棋のアマ三段。