【書評・紹介】『きみと世界の終りを訪ねて』 こるせ
滅亡後の世界とささやかな百合とアンドロイドとクローンと。
ポスト・アポカリプスを描く連作集。
| ストーリー | |
| 絵 | |
| キャラクター | |
| 感動度 | |
| 結末が気になる度 | |
| 美しさ | |
| 電子書籍 | 有り |
あらすじ
気象制御衛星の暴走、それに端を発する戦争で人類が滅亡してから数百年。
終末を巡る少女たち、その軌跡を描いたポストアポカリプス連作集。01『再定義する希望』
長いスリープから目覚めたアンドロイドと、クローンの少女。
窓越しに交わされる二人の想い。02『継ぎ接ぎの希望を抱いて』
世界を終わらせないため奔走した、""オリジナル""の記憶。03『灯火の機械たち』
終末を旅する二人の少女。
彼女たちが出会ったのは、誰もいない街を照らし続けるアンドロイドだった。04『きみと世界の終りを訪ねて』
一迅社WEB | インフォメーションポータル | 書籍情報 | きみと世界の終りを訪ねて (ichijinsha.co.jp)
旅を続ける少女たちが、その果てに見出したものは…。
書評
ポスト・アポカリプス。
文明が崩壊した後の世界を描く連作短編集です。
舞台は隕石の衝突、気象制御衛星の暴走、戦争などが原因で人類が滅亡してから数百年が経過した地球。
尤も植物が絶滅するほどではなく、動物も生存しています(表紙左上には「青い鳥」がいますしね)。
しかし、外気は人にとって有害なものに変わってしまったようで、マスクがなければ生存不可。
また、人が作った設備なども損壊が進んでおり、人が生存するには厳しい環境であることに変わりはありません。
登場人物は人(クローン)とぱっと見では区別がつかないアンドロイド。
例えば表紙絵。
左側の女性がアンドロイド、右側の女性が人です。
本作は、『きみと世界の終りを訪ねて』というタイトルが表す通り、「人類滅亡後の地球を旅する物語」であり、「世界の終りを訪ねる物語」です。
尤もこれは本作を構成する短編の1つから取られたものですが、内容的に本作の全体をも形容する言葉であることに変わりはありません。
なお、レーベルは「コミック百合姫」であり、ある意味百合漫画ではある作品ですが、その要素は薄いです。
SFコミックの従たる要素として、弱めの百合が出てくるくらい(尤も想いの強さで言ったら全然弱いどころかむしろ強すぎるくらいですが)。
4編の物語からなる連作短編集ということで、1編ずつ紹介していきます。
再定義する希望 redefine(“Speranza");
redefinは再定義。Speranza(スペランツァ)は登場人物、主人公の1人であり、イタリア語で"希望"という意味を持ちます。
ページ数は42ページ。
舞台は滅んだ後の世界。
スリープから目覚めたアンドロイドと施設の中で1体のアンドロイドと暮らすクローンの少女の物語。
アンドロイドと人の愛情というかが描かれ、結構ガツンとやられるストーリー。
物語の世界に読者を一瞬にして引き込む物語です。
継ぎ接ぎの希望を抱いて ∴x=Speranza
∴は故に。つまり、「故にxはスペランツァである」といったような意味合い?
ページ数は36ページ。
舞台は滅ぶ前の地球。
と言うより滅ぶ直前の地球。
巨大隕石の落下、そして戦争で既に外気は人を害するものに変わり、人類の滅亡まで1年となった世界。
描かれるのは、気象制御衛星を開発した博士とその研究員。
この1編が百合漫画たる所以です。
そして2つ目の短編でありながら、もう答え合わせがなされます。
世界がこうなった理由、そしてクローンが作られた理由。
灯火の機械たち Inherit the Touch
Inherit the Touch.
直訳すると「タッチを継承する」ですが、タッチの意味するところはお読みください。
ページ数は38ページ。
舞台は滅んだ後の世界。
登場人物は人のミミとアンドロイドのユユ(表紙絵の2人)。
その2人に加え、アンドロイドのエリザベスの3人で物語は進んでいきます。
そして1ページ目を読んだ瞬間にこの作品の、この旅の意味するところがわかるはずです。
描かれるのは、人が滅んだ後のアンドロイド達の姿。
仕える人類が滅んだ後、アンドロイド達はどうしていたのか。
ラストの1枚絵は圧巻です。
きみと世界の終りを訪ねて keep the end just a little longer
keep the end just a little longer.
終りを、終末をもう少しだけ長く。といったような意味合いでしょうか。
ページ数は47ページ。
最後の1編です。
今まで描かれてきた4人の女性達が一同に会し、物語は結末を迎えます。
全ての答え合わせがなされるお話です。
タイトルの『きみと世界の終りを訪ねて』、特に「きみ」は一体だれを指していたのか。
感動以外に言葉がない物語です。
ARCHIVES
漫画ではなく設定資料?です。
1ページ。
中身は完全にネタバレですので、絶対に前の4編を読んだ上で訪れてください。
そしてここでは、人類が滅亡に到るまでの年表が書かれているのですが、これをどう取ったらいいのかかなり悩みました。
みなさんはこの年表の最後の行をどう受け取るでしょうか?
そして何と言ってもARCHIVESの次のページに描かれているイラスト。
救いです。
総評
ポスト・アポカリプスとほんの少しの百合を描いた連作短編集。
人とアンドロイドと世界の終末を描くだけあって結構重たい内容ですが、登場人物が全員可愛らしいこともあり、決して悲観になりすぎることもなく、個人的には良い感じのバランスでした。
絵に関しては、背景はそこまで緻密に描かれているわけではないと思うのですが、そこがむしろ、モノクロとも合わさることによって、「滅んだ後の世界」という世界観に見事にマッチしていると感じました。
特に各編の最後の1枚絵が、その編の物語を1枚の絵にぎゅっと濃縮したかのようで、本当に良いです。
ストーリー自体も、短編1つ1つだけ取り出して読んでも完成された物語であり、それらを合わせてまた1つの物語となるあたり、これぞ連作集だ!というものです。
滅亡後の世界とささやかな百合とアンドロイドとクローンと。
ポスト・アポカリプスを描く連作集。
是非お読みください!
ネタバレを含む考察的な記事はこちら。
恐らく同じ登場人物が表紙に描かれている作品はこちら。
単行本
電子書籍
dorasyo329
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