【書評・紹介】『奇妙な街の鳥たち』 駒津ゆはり
変化の街と不変の街
異なる価値観の街に住む鳥たちが織りなす、示唆に富んだ物語
| ストーリー | |
| 絵 | |
| キャラクター | |
| 心を動かされる度 | |
| 独自性 | |
| 電子書籍 | 有り |
あらすじ
「僕達って似た姿をしていても
奇妙な街の鳥たち 駒津 ゆはり(著/文) – KADOKAWA | 版元ドットコム (hanmoto.com)
感じていることはきっと違う」
毎日のようにモノや天気、景色さえもが変わり、
刺激を求め新しい価値観を好む鳥たちが集まる「変化の街」。
全ての規則が厳格に定められており、
静寂と繊細な価値観を重視する鳥たちが住む「不変の街」。
「変化の街」で暮らすインコ君と、
「不変の街」で暮らすカラス君。
住む環境が全く異なるふたりが偶然出会ったことから、
彼らの心は、少しずつ動き始めていく。
“変わる”ことをやめない街。
“変わらない”ことをやめない街。
2つの対照的な街で暮らす鳥たちの物語を、
全頁カラーで紡ぐ、寓話ファンタジー。
あなたの瞳に、この世界はどう映る?
『変化の街篇』『不変の街篇』『渡り鳥篇』の3篇と、
描き下ろしサイドストーリーや設定イラストも収録。
書評
絵本ではありません。
漫画です。
でも、絵本のような漫画です。
毎日のようにモノや天気、景色さえもが変わり、
刺激を求め新しい価値観を好む鳥たちが集まる「変化の街」。
全ての規則が厳格に定められており、
静寂と繊細な価値観を重視する鳥たちが住む「不変の街」。
価値観の違いによって住む場所を変えた鳥たちが住まう世界。
変化の街に住むインコと不変の街に住むカラス。
この2人の出会いから、物語は始まります。
端的に言えば、価値観の違いをどうやって乗り越えていくか。
理解していくかという物語。
温かみのある絵柄が特徴的です。
そんな物語は、次の一節から始まります。
「僕達って似た姿でも
『奇妙な街の鳥たち』 駒津ゆはり
見えたり感じたりしていることが
違うんじゃないか?」
そう気づいた鳥達は
感覚が似ている者同士で
巣を作り
それはやがて
大きな街へと
発展していったのです
価値観の違いによって、分かれた鳥。
私はこの一文を読んで、
「人間は万物の尺度である」というプロタゴラスの言葉を思い出しました。
つまりは「相対主義」。
「絶対的な真理はありえない。どのような立場もそれなりに正しい」という考え方。
これはある意味で理想的な考え方であると私は思っています。
言うなれば、みんなちがって、みんないい。
誰にも否定されることのない世界。
それが最終的に行き着く一つの形が、
この物語で描かれる
「変化の街」と「不変の街」。
価値観の異なる者同士が住む場所を変え、接触しないようになった世界なのではないかと。
ですが、これはある意味で正しくもあり、またある意味で不幸な世界であると思います。
自分とは異なる価値観を持つ人々と語り合わない。
それは、否定されることが無くなると同時に、新たな気付きの機会を逸することでもあると。
この物語は、そんな異なる価値観の人々同士の接触が少なくなった世界で、
価値観の異なる鳥たちが出会う物語です。
そして、その出会いによって物語は進んでいきます。
私は、異なる街に住まう鳥同士の出会いの物語が、
相対主義で否定される普遍的な真理の探究、
もしかしたら、絶対的な真理が存在するんじゃないか。
存在しないとしても、異なる価値観を乗り越え、ともに手を携えることができるんじゃないか。
そういう物語であると思いました。
今の世界は、社会は、価値観によって人々が分断されることが多くなりました。
そんな社会に住まう私達だからこそ、この物語から何かを感じ取れるのではないでしょうか。
変化の街と不変の街。
異なる価値観の街に住む鳥たちが織りなす、示唆に富んだ物語。
是非お読み下さい!
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