【書評・紹介】『記者は何を見たのか 3・11東日本大震災』

ドキュメンタリー東日本大震災

東日本大震災の取材に当たった読売新聞の記者78人が語る震災

著者:読売新聞社

考えさせられる度
読みやすさ
電子書籍 無し
広告

あらすじ

号泣した記者がいた、歯を食いしばってシャッターを切ったカメラマンがいた。極限の現場で彼らは何を考えたのか。一人称で語る78人の取材記録。

記者は何を見たのか : 3・11東日本大震災 読売新聞社(著) – 中央公論新社 | 版元ドットコム (hanmoto.com)

書評

2011年3月11日14時46分。
東北地方を最大震度7の地震が襲いました。
そして、その地震によって引き起こされた津波が沿岸部を襲いました。

犠牲者・行方不明者、合わせて18,000人以上。
重軽傷者6000人以上。

その震災の取材に当たった読売新聞の記者、78人の手記をまとめた本です。

本書は
津波、原発、官邸・東電など、東京、千葉そして各地で
の四章から構成されています。

その中で、やはり胸を打つのは津波の章。

震災5日後になっても支援の手が行き届かず、食料にさえ困っていた精神病院。
津波ごっこをして遊ぶ児童
世界中で報道された本書の表紙写真
震災の夜に生まれた新しい命
患者を助けて命を落とした看護師

記者として、第四の権力とも言われる報道として、
目の前にある苦しさ、辛さをどう伝えるべきか。

家を、家族を、大切なものを失った人たちに、
何があったのか、どう思うかを尋ね、そして写真を撮る。

記者としての使命感と目の前で苦しむ被災者にカメラを向ける葛藤。
そうしたやり場のない感情をダイレクトに感じさせる章になっています。

一方で対照的なのが第三章の原発。
はっきり言います。
非道いものです。

本書の中でも所謂、原子力ムラに関する記述があります。
しかし、原子力ムラ及び当時の民主党政権に対する批判を書き連ねるのみで、
原子力ムラを作り上げてきた歴代政権。
特に読売新聞が擁護してきた自民党政権に対する批判はなく、当時政権の座にあった民主党政権ばかりを叩く。

第一章の津波で、実際に現場を目にした記者たちが
自分の行動は果たして正しいのか、もっとやれることがあったのではないかと自問自答を繰り返しているのとは対照的に
政治を伝える立場にいながら、震災前の平時に原子力ムラについて積極的に報じてこなかった記者たちの反省は皆無。

お前らが権力をしっかりと監視してこなかったから原発事故は起きたんじゃねえのか?
自分らのことは棚に上げて他者批判か?
と言いたくなるくらい、最低最悪の取材後記でした。

なんでしょう。
「事件は会議室で起きてるんじゃない。 現場で起きてるんだ。」
という有名なセリフを思い出しました。

それくらい、現場を取材した記者と、会議室を取材した記者とで温度感に差があるように感じる本でした。

記者は、被災者を除けば、救助に当たる人たちと同じくらい現場に入る人であると思います。
そんな外から来て、現実を目の当たりにした記者たちの証言もまた、被災者の証言同様貴重なものであると思います。

この教訓を次に活かすには。
そして、現場を見ることの重要性を考えさせられる一冊でした。

読売新聞の記者78人が語る、東日本大震災。
是非お読みください。

単行本

文庫本

こちらは78人ではなく、77人の手記。

号泣した記者がいた。歯を食いしばってシャッターを切ったカメラマンがいた。77人が極限の現場から伝える取材記録。彼らはその時、何を感じ何を考えたのか。

記者は何を見たのか -読売新聞社 著|文庫|中央公論新社 (chuko.co.jp)
The following two tabs change content below.
自称システムエンジニアのくせに、農学系の地方国立大に通うおかしな生き物。 ひつぎ教育研究所社長。 好物は恋愛小説と生物学、哲学。BL以外はなんでも読む雑食。 一応、将棋のアマ三段。