【書評・紹介】『孤塁 双葉郡消防士たちの3・11』 吉田千亜
東日本大震災の双葉郡。他県からの応援部隊もない中、地震・津波・原発の災害対応に当たり続けた双葉消防本部を追ったノンフィクション。
| 考えさせられる度 | |
| 電子書籍 | 有り |
あらすじ
われわれは生きて戻れるのか? ――原発が爆発・暴走するなか、地震・津波被害者の救助や避難誘導、さらには原発構内での給水活動や火災対応にもあたった福島県双葉消防本部一二五名の消防士たち。原発事故ゆえ他県消防の応援も得られず、不眠不休で続けられた地元消防の活動と葛藤を、消防士たちが初めて語った。一人ひとりへの丹念な取材にもとづく渾身の記録。
孤塁 双葉郡消防士たちの3・11 – 岩波書店 (iwanami.co.jp)
受賞歴
第63回日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞) 受賞
第42回講談社本田靖春ノンフィクション賞 受賞
日隅一雄・情報流通促進賞2020 大賞
書評
2011年3月11日14時46分。
東北地方を最大震度7の地震が襲いました。
そして、その地震によって引き起こされた津波が沿岸部を襲いました。
加えて、福島第一原発が全電源喪失、メルトダウンを起こすという深刻な事故が発生しました。
その福島第一原発がある双葉郡を管轄する福島県双葉消防本部。
地震、津波被害者の救助、避難誘導。
加えて、原発内での給水活動や火災対応にも当たった消防士達にスポットを当てたノンフィクションです。
そんな本書の特筆すべき点は、
双葉消防本部は本部として本書の取材を受けています。
その結果60人を超える人の証言を得、本書が執筆されました。
震災発生から時系列に沿って、どのようにして地元の消防が動いていたのかはもちろんのこと、
現場で救助に当たる各隊員のバックグラウンドにまで迫ることで、
表面的に震災を描写するのではなく、その一人一人がいかにして活動していたのかが伺えます。
家族が無事なのかどうかわからないまま、目の前の命を救うために活動する人。
今すぐにでも大切な人の無事を確認したいと思いながらも、それができない。
そして、原発事故後は、見えない放射線との戦い。
福島第一原発と消防というと、クローズアップされるのはやはり「東京消防庁ハイパーレスキュー隊」。
当時の石原都知事が涙ながらに感謝を述べていた場面などは幾度も報道されていたと思います。
そんなハイパーレスキューとは対象的に、本書が出るまで中々報じられてこなかったのが双葉消防本部。
原発内で出た負傷者の搬送。
原発内で起こった火災の対応などを行いました。
被爆の恐れを抱きながらです。
自分も被爆するかもしれない。
もう生きて戻れないかもしれない。
目に見えない放射線に対する恐怖、不安などが先述の通り、各個人のバックグラウンドと関連付けて描写されており、ありきたりな言葉ですが、胸が痛くなりました。
そして、あらすじにもあるように、
「原発事故ゆえ他県消防の応援も得られず、不眠不休で続けられた地元消防の活動と葛藤」
不眠不休で交代もなく救助活動を続けたという事実。
本書のタイトルとなっている「孤塁」とは、
ただ一つ残って味方の助けのないとりで。孤立したとりで。
孤塁(こるい)とは? 意味や使い方 – コトバンク (kotobank.jp)
そして、第8章の題となっている「孤塁を守る」とは、
孤立したとりでを守る。転じて、孤立無援の状態にありながらも、一人、あるいはわずかな人数でことを進めて行くことをたとえていう語。
孤塁を守る(こるいをまもる)とは? 意味や使い方 – コトバンク (kotobank.jp)
これほど、的を射たタイトル、章題はないと思います。
ですが、更に心にくる章題が本書にはあります。
第5章「さよなら会議」 3月15日
東京電力から来た、第一原発の冷却要請。
消防長(消防本部のトップ)は、命令するのではなく、部下に意見を求めます。
どう思うか。
現場で活動にあたる消防本部にすら降りてこない、伝えられない情報。
来ない応援。
尽きていく物資。
すり減っていく精神。
そして何より、伝えらなかったそれらの事実。
色々と考えさせられる本です。
本書の最終章では、災害が展開期から安定期に入った頃のことも描かれています。
行方不明者の捜索や誰もいない地域の見回り。
私が本書を読んで考えたことは二つ。
災害の終わりとは何か、そして原発をどうすべきか。
復興はいつになったら終わるのか。
例えば、東日本大震災からもう10年以上が経ちました。
被災県は震災から復興したのでしょうか。
そして、コントロールができなくなった原発がもたらすもの。
電力不足や資源価格の高騰によって上がる電気代。
安い電力が安定して供給される環境に住むために原発に頼るのか。
このような事態を二度と起こさない為に原発をやめ、厳しい環境を受け入れるのか。
明確な答えのある問題ではないと思います。
しかし、であるからこそ、考え続けることが重要であるとも思います。
そして、その答えを探す道のりで読む本として、この本をおすすめしたいです。
何より、あの災害を忘れないためにも。
東日本大震災下の双葉消防本部を追ったノンフィクション。
是非お読み下さい。
単行本
文庫本
消防士7名に追加取材がされている。
電子書籍
dorasyo329
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