【書評・紹介】『あの日』 小保方晴子
一人の科学者が科学者でなくなるまでの過程を綴った一冊
| 読みやすさ | |
| 考えさせられる度 | |
| 専門性 | やや高い |
| 電子書籍 | 有り |
あらすじ
STAP騒動の真相、生命科学界の内幕、業火に焼かれる人間の内面を綴った衝撃の手記。1研究者への夢 2ボストンのポプラ並木 3スフェア細胞 4アニマル カルス 5思いとかけ離れていく研究 6論文著者間の衝突 7想像をはるかに超える反響8ハシゴは外された 9私の心は正しくなかったのか 10メディアスクラム 11論文撤回 12仕組まれたES細胞混入ストーリー 13業火etc.
あの日 小保方 晴子(著/文) – 講談社 | 版元ドットコム (hanmoto.com)
真実を歪めたのは誰だ? STAP騒動の真相、生命科学界の内幕、業火に焼かれる人間の内面を綴った衝撃の手記。
書評
STAP細胞(刺激惹起性多能性獲得細胞)で知られる小保方晴子氏が著した本です。
まずは、STAP細胞について。
と言っても説明するまでもないでしょう。
簡単に言うと
・iPS細胞のように全能性を持つ
・細胞に外部から刺激を与えるだけで作れる
とされたものです。
この論文はScienceに掲載されたものの、疑義が生じことから撤回されています。
この本はそのSTAP細胞にまつわるあれこれ。
小保方氏が研究の道を志し、博士号を取得し、STAP細胞の研究に携わり、論文を撤回、理化学研究所を退職、博士号を取り消されるまでの過程を記したものです。
冒頭、一人の科学者が科学者でなくなるまでの過程を綴った一冊と述べましたが、それ以外には言いようがないと思います。
少なくとも本書は著者の主観に基づいて書かれたノンフィクションであって、科学書ではありません。
STAP細胞は実在するのか、捏造はあったのかという疑問に明確な答えを出してくれるわけではないです。
と言っても、高校生物程度の知識がなければ読んで理解することは厳しいかもしれません。
ただ、一人の研究者が、ある日突然国民から目の敵にされ、コミュニティを追い出される話です。
この本を読んでいて思ったのは、というかSTAP細胞が騒がれた当時から思っていたことですが、
STAP細胞問題は様々な論点がごっちゃ混ぜになっていて、その結果バッシングが起き、研究者の自殺によって発生学の発展を遅らせたということ。
・STAP細胞があるのかないのか
・その過程で研究不正、捏造があったのかなかったのか
これらは本来、関係はするものの別問題です。
それを一緒くたにしたからおかしくなる。
それに加え、大した科学的知識もないくせに騒ぎ立てたマスコミと国民。
本来であれば、論文を撤回し、研究の不正確さに対する処分が行われただけで済んでいたはずの事柄。
それをマスコミが持ち上げ、国民が騒ぎ立て、結果一人の研究者が命を絶ち、筆者が心に傷を負うこととなる。
その有り様が筆者の率直な文章によってありありとわかります。
が、一方で、人間関係など気にせず研究に真摯であればこんなことになっていなかったのもまた事実。
人が二人いれば人間関係が生じ、たとえ科学コミュニティであったとしても、科学に反する人間的な人情や妬み、損得勘定が働く。
本件を冷静に科学の目で見ようとしなかった国民=一人の優秀な科学者の命を奪ったとも言える加害者。
そしてこれから科学、研究の道を志そうとする人。
そうした人々にこそ読んで欲しいと思いました。
本来こういう本を人に勧める時は、全く違う方向から書いた本も一緒に勧めるのですが、本書に関してはそもそもSTAP細胞に対して批判的な人が読むであろうことを考えて、この本だけで別に良いかなとも思います。
何より、STAP細胞を巡る一連の事柄について批判的に書かれた書籍の著者というのは往々にして、笹井氏の自殺における加害者の立場にあると思うので。
私自身は、笹井氏という極めて優秀な科学者の命がなぜ失われなければならなかったのかを知りたいと思い本書を読みました。
その答えがわかったとは言いませんが、それでも得るものはあったように思います。
STAP細胞を巡る一連の騒動の当事者となってしまった著者が語る「あの日」。
是非お読み下さい。
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dorasyo329
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