【書評・紹介】『最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常』 二宮敦人

2023年2月10日インタビュー本,インタビュー・対談本,エッセー・随筆北澤平祐,二宮敦人

東京藝術大学で日々を過ごす天才達のおもしろノンフィクション!
音楽、そして美術とは。

著者:二宮敦人
カバーイラスト:北澤平祐

読みやすさ
笑える度
感動度
描写
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電子書籍 有り
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あらすじ

才能勝負の難関入試を突破した天才たちは、やはり只者ではなかった。口笛で合格した世界チャンプがいるかと思えば、ブラジャーを仮面に、ハートのニップレス姿で究極の美を追究する者あり。お隣の上野動物園からペンギンを釣り上げたという伝説の猛者は実在するのか? 「芸術家の卵」たちの楽園に潜入した前人未到の探検記。

二宮敦人 『最後の秘境 東京藝大―天才たちのカオスな日常―』 | 新潮社 (shinchosha.co.jp)

書評

東京藝術大学。
ご存じでしょうか?

略称・芸大。
国立大学にして、芸術系大学の最高峰。

倍率は美術学部が11.5倍、音楽部が3.2倍。
東京大学理科三類の倍率が4倍程度と考えると、東京藝術大学の方がはるかに難関校。

そんな芸大。
副題にもあるように集まっているのは「天才」。
その日常は「カオス」。

この本は小説家・二宮敦人が芸大の学生達へのインタビューをもとに著したノンフィクションです。
ちなみに著者の妻が当時芸大生だったことが執筆の動機です。

本書の面白いところはやはり常識では考えられない芸大での日々。
生協でガスマスクが売っていたり、学内で木や石のオークションが開かれたり、半裸で踊ったり。
まあ上記はすべて美術学部の話ですが。

基本的に私たちが想像するような芸術のカオスな日常は美術学部の方でした。
音楽部の方も確かに日常離れはしているけれど、カオスというよりも真面目過ぎて?みたいな。

演奏をするためだけにその曲の歴史から当時の環境から何から何まで調べたり。
表現をするためにいろいろな努力をしていたり。

まあいずれにせよ非芸大生からすると想像もできないような日々が語られています。

私が特に印象に残ったのは、芸大生の恋愛事情。

オペラの練習で恋愛感情が生まれたり、振られて作品が作れなくなったり。
芸術を、自分の感情をアウトプットして表現するものと考えれば頷けます。

そんな中、本書では一組のカップルを取り上げています。
具体的には読んで頂きたいですが、すごく素敵な話が書かれていました。

そしてもう一つ印象に残ったのが、美術と音楽の関係性。

もともと芸大は「東京美術学校」と「東京音楽学校」が統合してできた大学。
音楽と美術は同じ芸術といえども、やはり違うのかなと読む前は思っていました。
現に本書の最初は美術と音楽の学生の対比から始まります。
音楽が陽キャ、美術が陰キャみたいな。

しかし、読み進めるうちにこの二つの学部の関係性が見えてきます。
一緒にやる学祭(藝祭)もそうですし、それ以外のところでも。
この相乗効果?とでも言うべき部分もまた違った意味で面白かったです。

でも、読んでいて思ったのは、想像もできないような日々を送る彼らの想いは決して共感できないものじゃないということ。

そして、こうしたバックグラウンドがあるからこそ、我々は芸術に感動するのではないかということ。

一章約20ページが十四章という形がとられているので読みやすいです。
芸大での日々が面白いので基本はサクサク読み進められます。
でも、その中にある芸大生の想いとかを読むと、読み進める手が止まります。
この面白さの中にある感動?とでも言えばいいのでしょうか。

その塩梅がまた良いです。

小説家・二宮敦人が芸大を舞台に書いたノンフィクション。
是非お読みください!

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自称システムエンジニアのくせに、農学系の地方国立大に通うおかしな生き物。 ひつぎ教育研究所社長。 好物は恋愛小説と生物学、哲学。BL以外はなんでも読む雑食。 一応、将棋のアマ三段。