【書評・紹介】『15歳のコーヒー屋さん 発達障害のぼくができることから ぼくにしかできないことへ』 岩野響

2023年2月10日SDGs・持続可能な社会を考える上で読んでおきたい本,インタビュー本,インタビュー・対談本,多様性社会の実現を考える上で読んでおきたい本,教養書,ビジネス書,ドキュメンタリー,福祉

学校に馴染めず不登校になり、受け皿である教育支援機関からも爪弾きにされた発達障碍の筆者が、生き方を模索しコーヒー屋さんという仕事に出会うまで
多様性の時代に読んでおきたい一冊

読みやすさ
考えさせられる度
電子書籍 有り
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あらすじ

発達障害、15歳のぼくがコーヒー屋さんをはじめました
10歳で発達障害のひとつ、アスペルガー症候群と診断。
中学校に通えなくなったのをきっかけに、あえて進学しない道を選んだ15歳の「生きる道探し」とは?
現在、15歳のコーヒー焙煎士として、メディアで注目されている岩野響さん、初の著書! ご両親のインタビューとともに、ベストセラー「発達障害に気づかない大人たち」著者、精神科医・星野仁彦先生の解説も掲載

「15歳のコーヒー屋さん 発達障害のぼくができることから ぼくにしかできないことへ」 岩野 響[生活・実用書] – KADOKAWA

書評

アスペルガー症候群と診断された筆者がコーヒー屋さんを開くまでのお話です。
筆者とご両親、それぞれの視点からコーヒー屋さんを開くまでの経緯が語られています。

発達障碍を知り、診断されるまで。
小学校で出会えたとても良い先生。
発達障碍を理解してくれた中学校の担任と、理解しなかった顧問の教師。
不登校とまたしても理解してくれなかった教育支援機関の教師。
独自の生き方を模索しコーヒー屋さん(焙煎士)という仕事に出会うまでとそれから。

昨今、「親ガチャ」、「担任ガチャ(教師ガチャ)」という言葉が話題ですが、その一つの例だと私は思いました。
解説で心療内科医の先生はこう語られています。

響くんのご両親が、「学校で輝く場所がない。ならば、家の中でできることをやって、自信を取り戻させたい」と気づき、実行されたのは奇跡的なことです。

15歳のコーヒー屋さん 176ページより

響くんに「学校に行かなくていいよ」と言って、ご両親が受け入れたこと。
彼が好きなことをとことんやらせて、それを仕事にできたこと。
岩野家のストーリーには、さまざまな”いいこと”が奇跡的に重なっています。私は45年もの間に何千人もの発達障害者を看てきましたが、このようなケースは数えるほどしかありません。

15歳のコーヒー屋さん 180ページより

よく「親ガチャ」という言葉は否定的に語られますが、私はそうは思いません。
この本の場合、ご両親は筆者のことを思い考え行動されてきました。その結果がコーヒー屋さんという仕事に出会えたことに繋がるのだと思います。

「担任ガチャ(教師ガチャ)」という言葉も昨今よく言われるようになりました。
筆者はこの本で名前を挙げ謝辞を述べるほど小学校時代の担任に感謝しています。一方で、中学時代の顧問教員や不登校後に通った教育支援機関での扱いは読んでいて怒りを覚えるほど非道いものでした。これを担任ガチャと呼ばずしてなんと呼べばいいのでしょうか。
筆者の場合はこうした経緯があったこそなのかもしれませんが、世の中には教師によって苦しみその後の人生まで狂わされた生徒もいます。
本筋とはずれてしまいましたが、こうした日本の教育システムが抱える問題を提起している本でもあると思います。

発達障碍に関し、解説で心療内科医の先生はこうも語られています。

平均的に満遍なく物事をこなせるのが定型発達であるのに対し、発達障害の人はあることには飛び抜けているけれど、あることはまったくできないという、凹凸の部分があります。でも逆に、得意なことは人より優れた能力を発揮するので、適職につくことができれば特性を生かして大いに活躍できるのですね。

15歳のコーヒー屋さん 178ページより

この優れた能力を発揮できる適職に出会える社会こそが多様性社会の一つの形なのではないかと思います。
そしてこの本、筆者の今までの人生はその多様性を考える上でとてつもない良書になると思います。

具体的な数字にばらつきはあれど、発達障碍をもつ方たちは大勢いらっしゃいます。私の友人にもいます。
発達障碍をもつ方もそうでない方も発達障碍をもつ方と接する機会は多いはずです。
その時に相手の方を理解できるか。先述した教師ガチャの外れのように自分がならずに済むか。

私自身親ガチャ、担任ガチャでハズレを引いてきたと思っているのでこういった話中心になってしまいましたが、もちろんそれ以外にも色々な読み方ができます。というかこういう読み方をする人の方が多分少数です(苦笑)。

一人の若者が自分の生き方を模索し、焙煎士という職に出会う。その実話が綴られている。それだけで読む理由になると思います。

学校に馴染めず不登校になり、受け皿である教育支援機関からも爪弾きにされた発達障碍の筆者が、生き方を模索しコーヒー屋さんという仕事に出会うまで。
多様性の時代に読んでおきたい一冊。

是非お読みください!

単行本

電子書籍

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自称システムエンジニアのくせに、農学系の地方国立大に通うおかしな生き物。 ひつぎ教育研究所社長。 好物は恋愛小説と生物学、哲学。BL以外はなんでも読む雑食。 一応、将棋のアマ三段。