【書評・紹介】『地図とデータで見る軍事戦略の世界ハンドブック』 ブルーノ・テルトレ

2022年8月19日国際政治学,受験勉強の息抜きに読みたい勉強になる本,軍事学,経済学,教養書,政治学,地政学

21世紀の地政学を理解しておくのに最適な一冊!

編:ブルーノ・テルトレ
訳:土居佳代子
地図製作:ユーグ・ピオレ

読みやすさ
わかりやすさ
専門性 やや低い
電子書籍 無し
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概要

フランス、アメリカ、ロシア、中国……。列強は新たな脅威に直面し、それと戦うためのよりよい方法を模索している。軍隊をどう組織し、戦略をどう決めればいいのか。緊張下にある世界を、80点を超える地図、グラフ、図をもちいて分析し、軍事・戦略問題の観点から光をあてている。

地図とデータで見る軍事戦略の世界ハンドブック – 原書房 (harashobo.co.jp)

書評

地政学のハンドブックです。

まずは地政学について簡単に。
地政学とは地理的条件を重視し政治を考える学問です。
日本を実例として考えてみると
・海に囲まれている
・生物資源が豊富
・エネルギー資源に乏しい
・中国、ロシアなどの大国に近い
・領海や排他的経済水域が大陸から太平洋に出る際の通り道に当たる
といったことをもとに、日本と外国の関係を政治的に考えるということです。

その上でこの本は、特に軍事に比重を置いて書かれています。
例えば表紙のイラストに書かれているのは、各国のミサイル防衛システムの配備状況です。
このイラストからはまず、PAC-3などアメリカ製の防衛システムが多くの国で配備されているということ。
また、ロシア、中国、イラン、北朝鮮などの隣国が配備していることもわかります。
こうしたデータを元に、ミサイルと対ミサイル防衛の今までとこれからなど、「戦略、原理、手段」について解説されているのが第一章です。

第二章「戦争の遂行者プレイヤーたち」では具体的な国を挙げ、その国の軍事力について解説しています。
挙げられているのは米、欧、仏、露、中。
なぜこの面々にフランスが入っているのか、欧州と一括りにされていないのかが疑問ですが、フランスの著者が書いたフランスの書籍だからということなのでしょう(多分)。

第三章「危機と緊張」では、21世紀の差し迫った危機と緊張、あるいは既に戦争(戦闘)が行われている地域などについて解説しています。
ISIL、中国、北朝鮮、シリア、イスラエル、あるいは北極海など。
アジア以外のこうした危機、緊張について日本ではあまり報じられることが少ないので、ためになると思います。

そして第四章「戦争の未来」。
ページ数は少ないですが、気候変動戦争などこれから起こり得る戦争についての筆者の考えが述べられており、非常に興味深い章となっています。

2022年現在の国際情勢を知る上でこれほど良い書籍はないと思います。
特に地図やグラフなどの視覚効果に重きが置かれており、とてもわかりやすいです。

ただ注意しなければならないのは、この本は「ウクライナ侵略」以前の本だということ。
ロシアによるクリミア併合やウクライナ東部での戦闘には触れられていますが、はっきり言って昨今の事態を想定して書かれた本ではないと思います。
こうした地政学の本全般に言えることですが、出版されてから読む前の間にあった国際情勢の変化は自分で理解し、自分の中で修正して読む必要があります。

また、フランスの著者らによって、恐らく第三者的、中立的に書こうと努めているということも合わせて理解しておく必要があります。
具体的には、日本海を
「日本海(韓国では東海、トンヘ)」
と書いている点。
「竹島(独島)」や「尖閣諸島(ディアオユーダオ)」についても同様。
地政学の本であり、国家間で事実上争いが生じている以上両名併記は当然のことです。
しかし一方で気にする方もおられると思うので一応述べておきます。

昨今の「ロシアによるウクライナ侵略」もあり、国際情勢・地政学の知識・理解が必要とされている今、読んでおいて損はない本であると思います。
そして何より、地図や図表がふんだんに使われていることで本当にわかりやすくなっています。
21世紀の地政学を理解しておくのに最適な一冊です。
是非お読みください!

単行本

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自称システムエンジニアのくせに、農学系の地方国立大に通うおかしな生き物。 ひつぎ教育研究所社長。 好物は恋愛小説と生物学、哲学。BL以外はなんでも読む雑食。 一応、将棋のアマ三段。