【書評・紹介】『不道徳な経済学 転売屋は社会に役立つ』 ウォルター・ブロック
本書も学術書ではなく、読者を挑発し、混乱させ、怒らせることを目的としていると考えた
訳者あとがき より
リバタリアン(自由原理主義者)の立場から現在社会をバッサバッサと切っていく
訳:橘玲
| わかりやすさ | |
| 読みやすさ | |
| 笑える度 | |
| 皮肉が効いてる度 | |
| 電子書籍 | 有り |
| 他のメディア展開 | 単行本、文庫本(講談社)、文庫本(ハヤカワ文庫) |
あらすじ
経済の【タブー】解禁
『言ってはいけない』『上級国民/下級国民』の橘玲が「超訳」で贈る、
ポリコレ時代の劇薬! ! !
「あなたはもしかしたら、本書を劇薬だと嫌うかもしれない。だが残念なことに、この劇薬はじつによく効くのだ」
――フリードリッヒ・フォン・ハイエク(ノーベル経済学賞受賞者)「鮮やかなる啓蒙! 」
――ロバート・ノージック(『アナーキー・国家・ユートピア』)転売屋、ヤクの売人、売春婦、満員の映画館で「火事だ! 」と叫ぶ奴……
「不道徳」な人々を憎悪し、「正義」の名の下に袋叩きにする現代社会。
おかしくないか――
彼らこそ、そうした偏見や法の抑圧に負けず私たちに利益をもたらしてくれる「ヒーロー」なのだから!
自由という究極の権利を超絶ロジックで擁護、
不愉快だけれど知らないと損する「市場経済のルール」を突きつけた全米ベストセラーを、
人気作家・橘玲が超訳!橘玲による2万字序説「これからのリバタリアニズム」収録
不道徳な経済学──転売屋は社会に役立つ | 種類,ハヤカワ文庫NF | ハヤカワ・オンライン (hayakawa-online.co.jp)
あいトリ、表現の自由、ダークウェブ、ピーター・ティール、上級国民/下級国民、サイバーリバタリアン、政治思想と進化論……
書評
この本は、1976年にアメリカで出版された『Defending the Undefendable』を
『不道徳教育 擁護できないものを擁護する』として日本で単行本化し、
更に『不道徳な経済学 擁護できないものを擁護する』として文庫化されたものを
『不道徳な経済学 転売屋は社会に役立つ』としてハヤカワ文庫が再刊したものです。
そして更に、翻訳の仕方についても
翻訳にあたっては、原文を逐語的に日本語に移し替えるのではなく、私がこの本を読んでいたときのように、適宜、日本の現状にあてはめて訳し直している(ときには「意訳」を通り越して「超訳」にちかい部分もある)。
訳者あとがき より
(中略)
ただし、どのように「超訳」しても著者の論理にはいっさい手をくわえていない
と訳者が述べている。
その上で本書についてであるが、本書は前述の通りリバタリアン(自由原理主義者)の立場から社会を見る本である。
まずリバタリアニズム(自由原理主義)とは何か。
本書では次のように述べている。
自然権としての人権を前提とすれば、リバタリアニズムとはようするに次のような政治哲学だ。
ひとは自由に生きるのがすばらしい
これに対して、リベラリズムは若干の修正を加える。
ひとは自由に生きるのがすばらしい。しかし平等も大事だ
不道徳な経済学 23ページより
もっと簡単に言ってしまえば、「自由を絶対視し、市場への政府介入をも否定する」。
日本語では自由至上主義者とも訳される。
中学の社会の言葉で説明すれば、「小さな政府」を志向する考え方の一つと言ってもいいかもしれない(尤も「無政府主義」を志向する派もあり、「小さな政府」をも否定する場合もあるが)。
一方で我々の社会がどうなっているかというと、中国や北朝鮮などの社会主義国を除き、世界の多くの国は修正資本主義の国である。
すなわち、前述するところのリベラリズム。
自由は大事であるが、適宜市場にも介入するという立場。
たとえば北欧諸国などはその平等を重視する「福祉国家」と呼ばれるが、リバタリアニズムは声高らかにそれを否定する。
本書はそうしたリバタリアニズムの立場から現代社会(修正資本主義)を否定するものだ。
一例を挙げると
・麻薬密売人
・恐喝者
・学問の自由を否定するもの
・満員の映画館で「火事だ!」と叫ぶ奴
・闇金融
・最低賃金法を遵守しない経営者
・幼い子どもをはたらかせる資本家
などを本書は徹底的に擁護する。
それらを否定する社会は間違っていると声高に主張する。
「何を言っているんだ」と思う人もいるかもしれないが、この本を読むことによって、リバタリアニズムの考えに賛同ないしは理解を示す人も間違いなく出てくると思う。
しかし、多くの人はリバタリアンではない(修正資本主義を選んできた)のであるからして、本書には怒りを感じると思う。
何より本書自体が実に挑発的に書かれている。
ことごとく現代社会を否定し、矛盾をついてくる。
私自身の感想を述べるのなら、
最初は怒りが湧いたが読み進めているうちに、屁理屈というか、むしろリバタリアニズムに対する皮肉のようにすら思えてきて笑ってしまった(リバタリアンの方々には申し訳ないが)。
即ち、本書は二つの読み方ができると思う。
一つは「リバタリアニズムの考え方を知る」という読み方。
恐らく著者の意図するところはこちらであっただろう。
現実問題として現代社会は矛盾に満ちている。
そしてその矛盾を解決する一つの方法がリバタリアニズムであることは間違いない。
もう一つは「本書の論理展開を楽しむ」という読み方。
言葉は悪いが、屁理屈も理屈の内という名言が読んでいて浮かんでくる。
確かに筋は通っている。通っているが、荒唐無稽というかで笑えてきてしまうのだ。
私自身は、
前半部分で怒りを抱き、中盤で大笑いし、後半でそれは言えてる
となった。
どちらにせよ、「リバタリアニズムの考え方を知り」、「現代社会の矛盾と向き合う」という意味でこの本は良書である。
訳者による「超訳」によって、2020年代の今に即した言葉に書き換えられていることもあってとても読みやすい。
リバタリアニズムの立場から現代社会の矛盾を突く一冊。
是非お読みください!
文庫本
講談社+α文庫の文庫本を改題、再刊したもの。
訳者前書きが追加、巻頭解説をリライト。
電子書籍
旧版
単行本
講談社より刊行された原書。
文庫本
単行本を改題、講談社+α文庫で文庫化したもの。
dorasyo329
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