【書評・紹介】『群青の墓標 最後の沖縄県官撰知事・島田叡』 横家伸一
沖縄戦時の沖縄県知事を描いたドキュメンタリー
| 読みやすさ | |
| 考えさせられる度 | |
| 電子書籍 | 無し |
あらすじ
太平洋戦争末期、本土決戦の捨て石とされた沖縄。武器もなく、援軍も来ない。そんな、死と隣り合わせの県民を1人でも多く救うために、命を投げ出す覚悟で神戸から赴任した島田叡知事。どんな時も県民に寄り添い、毅然と執務を続けて共に戦い、散っていった島田の美しくも高潔な生き方を描く小説。今こそ辿りたい、沖縄戦の真実を。噛み締めたい、平和の意味を──。
群青の墓標 最後の沖縄県官撰知事・島田 叡 | 横家 伸一 |本 | 通販 | Amazon
書評
最後の沖縄県官撰知事・島田叡を描いたドキュメンタリーです。
『沖縄の島守 内務官僚かく戦えり』が緻密な取材に基づいたノンフィクション本であるとするならば、
こちらは、それらの文献と取材に基づき描かれた史実に基づく小説であるように思います。
まずは、島田叡について。
タイトルの通り、最後の沖縄県知事官撰知事です。
戦前、各都道府県知事(地方長官)は選挙ではなく国が選ぶ形で決められていました。
戦中になってもその仕組みは変わりません。
日本の敗色が濃厚となり、沖縄戦開戦待ったなしの1945年1月12日、島田叡は沖縄県知事となりました。
命の危険が明白である沖縄県知事というポスト。
誰もが尻込みし、前任の知事も出張と偽りずっと東京に滞在していたほど。
そんな県知事の職を何故島田は引き受けたのか。
そして戦争に県民が巻き込まれないよう精一杯努力した島田の姿が描かれています。
なお、本書については前書きに
※本書は史実をもとに書かれていますが、構成上、エピソード等に一部フィクションの箇所もあります。
群青の墓標 最後の沖縄県官撰知事・島田叡 前書きより
と書かれています。
個人的にはこの、フィクションの箇所というのがちょっと多すぎないかなと感じました。
島田知事を主人公として、沖縄戦を描いた作品であり、小説チックである以上仕方のないことではあり、また本書の執筆意図は、沖縄戦の実際を描くことで読者に平和を考えてもらうといったもの。
筆者もあとがきにおいて
意見広告というものがある。この本の出版は平和運動を何一つやって来なかった私にとって、まさにそのものであり、懺悔なのである。
群青の墓標 最後の沖縄県官撰知事・島田叡 あとがきより
と述べています。
しかし、その意図がちょっと強く出過ぎではないかなと。
反戦等の描写があまりも露骨というか。
島田知事の功績は事実であり、私自身も尊敬している人物です。
しかし、その描き方があまりにも好意的すぎ、現代の価値観に沿って描かれていることに違和感を覚えました(尤も、実際そのような人物であった可能性は否定できませんが)。
読んでいて感じたのは、ドキュメンタリーというよりも、史実をもとにした小説のようだなと。
尤も、沖縄戦の描き方もそうですし、島田知事の知られていない経歴など含め、前述の平和を考える書籍としては素晴らしいものであると思います。
何より私としては、島田叡という人物を知ってほしいというのが大きいです。
島田叡という人がいたのだということを知るために読んでいただきたい一冊です。
特に、島田知事と関係が深かった大田実海軍中将の有名な電報。
その最後の一文。
沖縄県民斯ク戦ヘリ 県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ
日本で唯一の地上戦を経験した沖縄。
米軍基地の問題、不発弾の問題等で、沖縄の戦争はまだ終わっていないとも言われます。
そこで考えたいのがこの電報。
唯一の地上戦を経験した沖縄に対し、特別の配慮はなされているでしょうか。
沖縄県民斯ク戦ヘリ
後世の特別の配慮をわざわざ電報で海軍の指揮官が送るほどのものであった沖縄戦の実態が伺える一冊です。
是非お読みください。
単行本
dorasyo329
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