【書評・紹介】『秘闘 私の「コロナ戦争」全記録』 岡田晴恵

医学,教養書,ドキュメンタリー,福祉岡田晴恵,新型コロナウイルス感染症

コロナの女王とも揶揄された岡田晴恵が語るノンフィクション
新型コロナに見舞われた日本であの時何が起きていたのか

著者:岡田晴恵

読みやすさ
わかりやすさ
考えさせられる度
専門性 やや高い
電子書籍 有り
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あらすじ

尾身分科会会長、田村前厚労大臣ら、コロナ対策を指揮した中心人物との生々しいやり取りであぶり出されるコロナ禍の真実。日本中が未曾有の災禍に見舞われたあの時、誰が、どう動いたのか!? この国の矛盾と歪みに直面した著者が、また訪れる危機のために何としても書き残しておきたかった「秘められた闘い」の700日!

岡田晴恵 『秘闘―私の「コロナ戦争」全記録―』 | 新潮社 (shinchosha.co.jp)

書評

岡田晴恵氏。
知らない人はほとんどいないのではないでしょうか。

2020年初頭から現在に至るまで続くコロナ禍。
その中において「モーニングショー」を始めとする番組に出演し、コロナ対策を訴え続けた感染・公衆衛生の専門家です。

一時は毎日テレビへ出演し、「コロナの女王」と呼ばれることもありました。

常に専門家の立場から感染対策を訴え続け、それが政権批判とも取られ大きなバッシングにもさらされた氏。
そんな著者が、あのとき何があったのかを語るノンフィクションです。

テレビの前で見ているだけではわからなかった様々なことが語られています。

専門性はやや高いにしていますが、コロナ禍でコロナウイルスやワクチンのニュースに積極的に接してきた方にとっては全然難しくありません。
免疫やワクチンの仕組み、ウイルスの変異とはどういうことをいうのかなど、感染症の基本的な事項が理解できていれば十分です。

そんな本書、1つ目のオススメポイントは、

著者といろいろな人のやり取り

特に私が衝撃を受けた部分です。

尾身茂会長、田村憲久厚労相、岸田文雄前政調会長、河野太郎ワクチン担当相etc…..。
(肩書は当時)

批判する側とされる側といったイメージがあったのですが、
実際は番組出演で一緒になったり、電話番号を交換し熱心にディスカッションをしていたりと、
テレビの前で見ているだけではわからなかったことが多く語られています。

特に田村厚労相
菅政権下で厚労相を務めていた彼ですが、著者とはかなりの頻度でやり取りを行っていたことが語られます。
それこそ、日本のコロナ対策の根底に関わる部分の話まで。

本書を読んで一番印象の変わる政治家は彼だと思います。

そして、2つ目のオススメポイントは、

各々の影にいた人物

例えば、尾身会長。
私はてっきり尾身氏が責任者というかトップだと『分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議』を読んでいて思っていたのですが、
実際にはその影に岡部信彦内閣官房参与がいたという、

また、本書の著者である岡田晴恵氏。
私はてっきり彼女は彼女の考えだけで話していると思っていたのですが、
実際にはその影に彼女の師匠である田代眞人氏がいたという。

その良し悪しはともかくとして、
表に出ていない人物がこんなにいたんだなあと感じました。

他にも、感染研の派閥争いのようなものや、専門家の政治への関与、マスコミやネットユーザーによるバッシングなど、著者の実体験が余すことなく語られています。

特に多くの人が興味を持たれるのは、やはり新型コロナのPCR検査がなぜ増えないのかという点ではないでしょうか。
ご存知の通り、著者はテレビで毎日のように検査の拡充を訴えてきました。
著者に留まらず多くの人々が言及してきました。
それなのに一向に増えなかった検査。

なぜ、増えなかったのか。
その舞台裏がかなり細かく語られています。

兎にも角にも、本書は事後検証を行う材料として有用なドキュメンタリーです。
もちろん著者の記憶と主張と事実を読み分け、判断する力が必要なことは言うまでもありませんが、あの時この国で一体なにが起こっていたのかを知るためには読むべき本です。

専門家会議の内情が記されている、
河合香織による『分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議』とともに読むことをおすすめします。

コロナの女王とも揶揄された岡田晴恵氏が記すノンフィクション。
是非お読みください!

単行本

電子書籍

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自称システムエンジニアのくせに、農学系の地方国立大に通うおかしな生き物。 ひつぎ教育研究所社長。 好物は恋愛小説と生物学、哲学。BL以外はなんでも読む雑食。 一応、将棋のアマ三段。