【書評・紹介】『黄砂にいどむ 緑の高原をめざして』 高橋秀雄
黄砂に挑んだ雑草科学者の話
写真・資料提供、あとがき:一前宣正
| 読みやすさ | |
| 考えさせられる度 | |
| 対象 | 小学校高学年~中学生向き |
| 電子書籍 | 無し |
あらすじ
小学生の頃1500種もの植物の名前を覚えたという一前宣正さん。大学で除草剤の研究をしていたが、黄砂を抑えようという日中共同研究プロジェクトのメンバーに。中国北西部に広がる黄土高原は砂漠化がすすみ、日本にまで飛来する黄砂を発生させていた。土地の保水力を高めるため、プロジェクトの粘り強い試みが始まる――。
/新日本出版社/子どもの本/シリーズ別紹介/学習に役立つ本/感動!ノンフィクションブックス/黄砂にいどむ (shinnihon-net.co.jp)
書評
黄砂。
西日本に住むようになってから、かなり気にするようになりました。
洗濯物につくので。。。
そんな黄砂をどうにかしようと挑んだ科学者のお話です。
そもそもまず、黄砂とは何か。
中国大陸奥地のオルドス、ゴビなどの砂漠の砂が強風に舞い上げられ、上空の偏西風に流されて海を渡り、日本にまで飛んでくる現象。
黄砂とは – コトバンク (kotobank.jp)
環境省のサイトに詳しい図がありました。

中国の西の方、匈奴や突厥、モンゴル帝国などが猛威を振るった地域から飛んでくる砂のことです。
そんな黄砂がもたらす被害。
日本では
・洗濯物の汚れ
・車の傷
・アレルギーの発症
などが知られています。
朝鮮半島でも同様の被害が発生しているようです。
しかし、もっと深刻なのが中国やモンゴル。
黄砂の原因となる砂漠を抱える地域です。
・視界が制限され、死者が出るほどの砂嵐、スモッグ
・農作物の被害
・停電
・交通網の麻痺
・重大な人体への悪影響
など、砂漠の近場は多大な影響を受けています。
この黄砂をどうにかしようと発足したのが「黄土高原緑化日中共同プロジェクト」。
そして、そこに参加した科学者・一前宣正氏について描いているのが本書です。
黄砂はそもそも何故発生するのか。
端的に言うと砂漠になってしまったから。
植物には、土に根を張り土の中の水分を保つという働きがあります。
しかし、自然の作用や過放牧・伐採などの人為的な影響によって、そうした植物の数が少なくなり、土中の水分が失われてしまった結果、その地域は砂漠となってしまいます。
それならば、砂漠でもう一度植物を育ててやれば良い!
というのがこのプロジェクトの発想。
「黄土高原緑化日中共同プロジェクト」と「緑化」の文字が入っているのはそのためです。
しかし、植物が簡単に育つのなら砂漠化という問題はとうの昔に解決しています。
では、このプロジェクトはどのようにして緑化に挑んでいったのか。
本書で語られる一前宣正氏は雑草の専門家。
つまり、私達がよく利用する植物ではなく、雑草を利用して砂漠に挑んでいきます。
児童書ということもあり、非常に読むやすい作品です。
一方で、科学的正しさにはやや疑念が残ります。
例えば、砂漠について本書は以下のように書いています。
砂漠とは、降水量が少ないために土壌が乾燥して、植物も動物も昆虫まで生きていられない土地のこと
『黄砂にいどむ 緑の高原をめざして』 128ページより
明確な誤りです。
確かに砂漠に生息する生物は少ないです。
しかし0ではありません。
砂漠では、砂漠に適応した生物たちが独自の生態系を構築しています。
例えば、「ナミブ砂漠」。
こちらは、世界自然遺産です。
そして、その登録の理由には以下のようなものも含まれます。
(9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
Namib Sand Sea – UNESCO World Heritage Centre を翻訳
(10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。
砂漠にも独自の生態系があり、決して生物が生息していないわけではありません。
そういう意味で、本書は「科学の本」ではなく「理科の本」と呼ぶのが適当であるように思います。
科学的正しさは二の次に、科学・自然について興味を持ってもらえるよう書かれた本であると。
砂漠化は深刻な問題です。
地球温暖化、水不足、食糧不足etc…..。
人類の存亡に直結する問題です。
そして、黄砂も日本人にとっては大きな問題です。
黄砂、砂漠化、そしてその解決について考え始めるのに良い入門書的児童書であると思います。
是非お読みください。
単行本
dorasyo329
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