【書評・紹介】『奇跡のリンゴ 「絶対不可能を覆した農家 木村秋則の記録」』 石川拓治

2022年8月19日SDGs・持続可能な社会を考える上で読んでおきたい本,受験勉強の息抜きに読みたい勉強になる本,教養書,生物学,伝記,農学,ドキュメンタリー映画(実写),青森

無農薬でリンゴを作る。
実現不可能と言われてきたリンゴの無農薬栽培を成し遂げた農家のノンフィクション。

著者:石川拓治
監修:「NHKプロフェッショナル仕事の流儀」制作班

読みやすさ
考えさせられる度
専門性
電子書籍 有り
他のメディア展開 文庫本、コミック、実写映画
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あらすじ

絶対に不可能といわれてきたリンゴの無農薬栽培を成し遂げ、ニュートンよりライト兄弟より偉大な発見をした男の感動ノンフィクション。長年の極貧生活と孤立を乗り越えて辿り着いた答えとは?

奇跡のリンゴ 「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録 | 株式会社 幻冬舎 (gentosha.co.jp)

書評

リンゴ。美味しいですよね。ちなみに私はアップルパイが好きです。
このお話はそのリンゴの無農薬栽培に一人の農家が挑み、達成するまでの物語。
阿部サダヲさん、菅野美穂さんの共演で映画化もされた物語の原作本です。

今みなさんが口にしているリンゴ。
正確には「セイヨウリンゴ」と呼ばれますが、元々の原種はとても小さくそんなに甘くない果実だったのです。
クラブリンゴや姫りんごと呼ばれているものがそれに近いです。
そんな原種をもとに、何百年もかけて品種改良を重ねてできたのが今の大きくて甘いリンゴです。
しかし、その品種改良の道のりは険しく、大きく進歩したのは19世紀になってからでした。
19世紀に何が起きたのか。「農薬」の発明です!
この農薬によって、病気や害虫による被害が減り、品種改良が瞬く間に進みました。
そして農薬のおかげでできた品種であるため、その栽培の前提には農薬の存在が不可欠な植物となりました。農薬に助けてもらわないと病気や害虫に負けてしまう弱い植物となってしまったわけです。
そんなリンゴですから、無農薬栽培は不可能だと考えられてきました。
しかし、一人の農家が農学のその定説を覆します。
その過程を描いた本が本書です。

その農家の名は木村秋則。リンゴの名産地、青森県弘前市の農家です。
妻が農薬に過剰に反応してしまう体質(作中では明言されていませんが、おそらく化学物質過敏症)だったこともあり、リンゴの無農薬栽培に挑みます。

しかし、ことはそう簡単には進みません。
農薬を使わなくなった途端に、病気や害虫の発生。
リンゴの木は花を咲かすこともなくなります。
来る日も来る日も手作業で害虫を駆除する日々。
とうがらしやお酢を撒いたり、様々なことを試みるも、事態は好転せず。枯れ始める木まで出てきます。

そこからどうやって無農薬栽培にこぎつけたのかということは…読んでください!

本書を読むにあたっての知識は特に必要ありません。
途中やや専門的な話も出てきますが、わかりやすく解説されているので、問題ありません。
そもそも、本書は農学の専門書ではなく伝記本、ドキュメンタリー本故、あまり気にする必要もないです。

木村秋則の人生、リンゴの歴史、無農薬栽培の歴史。
途中宇宙人に連れ去られたとか関係性が薄い話も出てきたりしますが、本当に面白く、そして考えさせられる本です。

最後に少し農薬についてだけ。
農薬、無農薬について語られるとき、大概農薬は悪者として語られます(本書はその限りではありませんが)。
確かに過去、人に害はないと考えられていた農薬の有害性が判明するなどの事件も多々ありましたが、一方で農薬によって食糧増産に成功し、飢餓が減らせたことも事実です。
漠然と「農薬は体に悪いからやめるべき。」ではなく、農薬の一長一短を知った上で考えて頂きたいです。
そもそも日本の農薬の規制は基本厳しく、農薬栽培の植物を食べたからといってどうこうなることはまずないです(一方で環境負荷については議論が進んでいない現状もありますが)。
そうした、人と植物と農薬の関係性についても、本書を読んだ上で考えてもらえると嬉しかったりします。

一応消費者庁による農薬の解説ページを貼っておきます。

無農薬でリンゴを作る。
実現不可能と言われてきたリンゴの無農薬栽培を成し遂げた農家のノンフィクション。
是非お読みください!

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