【書評・紹介】『さいえんす川柳 「研究者あるある傑作選」』 川柳 in the ラボ
日夜研究に邁進する研究者たちの笑いと悲哀に満ちた日常を詠んだ
研究者による研究者のための研究者あるある川柳傑作選
| 読みやすさ | |
| わかりやすさ | |
| 絵 | |
| 専門性 | 中 |
| 電子書籍 | 有り |
あらすじ
〈気になるの インスタ映えより ショウジョウバエ〉
〈ボスの言う「最近どう?」は「結果まだ?」〉
〈あぁ、その日? 俺はいいけど ハエがダメ〉
〈教授から 頼まれ答えは イエスかハイ。〉
〈息子より 細胞の世話 妻激怒〉
〈研究費 削りに削られ 大吟醸〉
―――誰かと分かち合いたくて、一句詠んでみました。
理系の間で密かに話題! 研究者が詠む、研究者のための「あるある川柳」。
『さいえんす川柳 「研究者あるある」傑作選』(川柳 in the ラボ):ブルーバックス|講談社BOOK倶楽部 (kodansha.co.jp)
自分の予定よりもマウスやハエの都合を優先し、毎日世話している細胞にときめき、誰もいない深夜のラボで実験の成功を噛み締める……。
実験をこよなく愛し、論文アクセプトのために奮闘するライフサイエンスの研究者たちが、笑いと悲哀に満ちた日常を綴ります。
川柳イベント『川柳 in the ラボ』に投稿された6815句の中から厳選した、傑作170句をご覧あれ!
書評
研究者たちが詠んだ川柳をまとめた本です。
一応表題は『さいえんす川柳』となっていますが、詠まれている川柳は細胞や遺伝子を扱う生物学と研究室内の人間関係を詠んだものが主で、物理学や地学の川柳はありません。
そしてその専門性というか、界隈独特の面白さが読者に伝わるのかという点について。
編者の方も後書きで、「研究者コミュニティの専門的な笑いが一般の方に伝わるかどうか不安。しかし研究とは違う仕事・環境にいても、この本に近い体験をしたり同じ思いをしたりする方は多いのではないかという気がする。」と述べられているように、この本の面白さが一般の方に伝わるかというのは紹介する私にもわからないです(一応生物・農学系の大学生故…)。
しかし、例えば
細胞と話し始める深夜帯
さいえんす川柳 10ページより
という川柳。
なんとなく共感できませんか?
私も深夜、気が付くとプログラム(PC)と話していて、あーあるあると思ったりしたのですが、みなさんはいかがでしょう…?
あるいは、第四章「愛すべきボス編」。
私は上司がいない故、想像でしかわからないのですが、これは結構企業で働いている方も共感できたりするのではないかなと。
例えば、
いにしえの技術を誇る老教授
さいえんす川柳 152ページより
ボスいないモノマネしたらボス登場
さいえんす川柳 164ページより
など。ボスを上司に言い換えれば、結構あったりするんじゃないかなあと思ったり。
そして約6800句の中から厳選しただけあって、川柳としても素晴らしいです。
林先生の「今でしょ!」やイギリスのEU離脱「合意なき離脱」、「インスタ映え」、「君の名は。」、「令和」など、その時の世相を上手くさいえんす川柳に融合した作品も多くあり、とても面白いです。
中には、「クロマチン」、「メディウム」、「プラスミド」などの専門用語が出てくる川柳もありますが、脚注でわかりやすく解説されているので専門用語がわからなくても何も問題ありません。
そしてそんなさいえんす川柳には服部元信先生のイラストが添えられていて、これもまた読者の笑いを誘います。
そんなさいえんす川柳の中で私が一番印象に残っているのはこちら。
キムワイプ借りた先輩今の嫁
さいえんす川柳 184ページ
キムワイプというのは、科学の実験や作業でよく使われるティッシュペーパーのようなものです。
水に溶けず、毛羽立ちがなく、それなりに高級で、器具の清掃に使ったり、理系には手放せない器具の一つです。
というか手放せないと言うより、理系・研究者の多くがこのキムワイプを熱狂的に愛しています。
そしてこのキムワイプ、原料がセルロース(植物の繊維の主成分で無害)なこともあり、キムワイプへの愛が故、そのまま食べてしまったり、糖化させて食べたり(実話)と、もう理系のキムワイプへの愛は留まることを知らないのです!(因みに、糖化させたものは食べたことないですが、そのまま食べるとあんまり美味しくないというか無味でした。)
そしてそんな愛してやまないキムワイプが愛する人との縁を取り持ってくれた。
キムワイプが月下氷人となってくれたのです!
最高じゃありませんか!?
とまあ、界隈の人にしかわからないような内輪ネタも出てきますが、そうではない川柳もかなりあるので、一般の方にも楽しんで頂けると思います。
研究者あるあるが詰まった川柳の傑作選。
理系の生態を知るのにも適した一冊です。
是非お読みください!
単行本
電子書籍
dorasyo329
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