【書評・紹介】『ガンバとカワウソの冒険』 斎藤惇夫、薮内正幸

2022年8月19日小説,SDGs・持続可能な社会を考える上で読んでおきたい本,動物ファンタジー,解釈のしがいがある物語,和風ファンタジー,児童文学,どんなに心が冷めている人でも絶対に涙を流す物語,児童書,野間児童文芸賞,動物文学,ファンタジー,冒険小説斎藤惇夫,薮内正幸,アニメ映画,高知

残された最後の清流を目指すネズミとニホンカワウソの冒険
『ガンバ三部作』ここに完結!

著者:斎藤惇夫
イラスト:薮内正幸

ストーリー
描写
イラスト
キャラクター
感動度
独自性
続きが気になる度
電子書籍 有り
他のメディア展開 アニメ映画

『ガンバ三部作』
第一作『グリックの冒険』はこちら。

第二作『冒険者たち ガンバと15ひきの仲間』はこちら。

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あらすじ

ガンバと15ひきの仲間は,ゆくえ不明のネズミをたずねて,四の島に渡ります.探しあてたネズミのそばにいたのは,死に絶えたはずの2ひきのカワウソでした.凶暴な野犬と戦いながら,カワウソの仲間が生き残っているかもしれない伝説の河「豊かな流れ」をめざして冒険がはじまります.そこには,想像をこえる体験が….

ガンバとカワウソの冒険 – 岩波書店 (iwanami.co.jp)

受賞歴

第21回野間児童文芸賞 受賞

書評

『ガンバ三部作』第三作です!
第一作、二作を必ず読んでおかないと内容が理解できないってことはないですが、一応読んでおいた方がストーリーがよくわかります。特に『冒険者たち』は読んでおいた方が良いと思います。

さて、ストーリー。
主人公ガンバはひょんなことから絶滅したはずのニホンカワウソと出会い、そしてカワウソがまだ生き残っているかもしれない「豊かな流れ」を目指すという物語です。

『ガンバ三部作』すべての言えることですが、個性豊かなキャラクター達が素晴らしいです。
主人公のガンバをはじめ、頭脳明晰なガクシャ、親分肌のヨイショ、穴掘りが得意なアナホリ、齧るのが得意なカリックなど個性豊かなネズミたちが物語を彩ります。
カモメのキマグレも欠かすことのできないキャラクターです。ガンバたちを「地を這うもの」と呼ぶいけ好かない奴なのですが、なんか憎めないんですよね。

そして、この物語の舞台、あるいはこの物語が描かれた背景について。
ご存知の通り、2021年現在、ニホンカワウソは絶滅しました。対馬でカワウソを発見したとの発表もありましたが、こちらはユーラシアカワウソということで別種。度々再発見のニュースが流れたりもしますが、恐らくもう生き残りは一匹もいないでしょう。

そんなニホンカワウソが最後まで生息していたと言われている場所が高知県四万十川流域です。
本作の舞台となった四の島のモデルもこの地域です。

ニホンカワウソ絶滅の原因は人間による毛皮目的の乱獲だと考えられています。
本作でそんなニホンカワウソの敵役となるのは野犬なのですが、恐らく彼らは人間を表しているのだと私は思っています。
この物語は、人間の手によって滅ぼされようとしているニホンカワウソをネズミのガンバというヒーローが救おうともがく物語なのだと。

ストーリーが面白く、キャラクター達も素晴らしく、感動できる傑作であることは間違いないのですが、日本人が滅ぼしてしまった「ニホンカワウソ」という生物がいたのだという事実を後世に伝えるという意味でもとても価値のある作品であると私は思います。
北は北海道から南は九州までどこにでも生息していた、昔の日本人にとってはとても馴染みのある生物、ニホンカワウソが日本人の手によって滅んでいく過程に思いを馳せながら読んで欲しい一作です。

本作でも薮内先生による精緻で温かみのある挿絵が物語をより魅力的なものにしています。物語の最後に描かれるニホンカワウソの一枚絵はとても感動的です。

『ガンバ三部作』の第三作。完結の物語。是非お読みください。

文庫本

単行本

電子書籍

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自称システムエンジニアのくせに、農学系の地方国立大に通うおかしな生き物。 ひつぎ教育研究所社長。 好物は恋愛小説と生物学、哲学。BL以外はなんでも読む雑食。 一応、将棋のアマ三段。