【書評・紹介】『グリックの冒険』 斎藤惇夫、薮内正幸
斎藤惇夫と薮内正幸のタッグが描く児童動物文学の最高傑作
「ガンバ三部作」はここから始まった
仲間のいる北の森を目指す飼いリス グリックの恋と冒険の物語
| ストーリー | |
| 描写 | |
| イラスト | |
| キャラクター | |
| 感動度 | |
| 独自性 | |
| 温かさ | |
| 幸福度 | |
| 電子書籍 | 有り |
| 他のメディア展開 | アニメ映画 |
あらすじ
飼いリスのグリックは,ある日,北の森で生き生きと暮らす野生リスの話を聞き,燃えるようなあこがれをいだきます.カゴから脱走したグリックは,ガンバに助けられ,動物園で知りあった雌リスののんのんといっしょに,冬の近い北の森をめざします….
グリックの冒険 – 岩波書店 (iwanami.co.jp)
受賞歴
日本児童文学者協会新人賞 受賞
書評
児童文学と聞いて「子供向けの幼稚な本でしょ?」と思われる方もいるかもしれません。
しかし、実際そんなことはなく、大人でも感動する、考えさせられる児童文学も数多くその最たるものが本作を含む『ガンバ三部作』です。
ストーリーは単純です。
飼いリスだった主人公グリックがカゴから脱走し、仲間がいると聞かされた北の森を目指す旅路の中で出会いと別れを繰り返しながら成長していく物語。
この小説の良いところはまず、読みやすいことです。
何故どうして北の森を目指そうと思ったのかが最初で説明され、後はただひたすらに目標が変わることもなく北の森を目指し旅を続けます。
目的が終始一貫しているので読みやすいです。
そして何よりストーリーが面白い。道すがら出会うキャラクター達が素晴らしい。
主人公グリックと途中から一緒に旅をすることになるのんのんの関係性の変化を読むだけでもう楽しいです。
あるいは、途中で登場する「ガンバ」というネズミはその後二作品で主人公として描かれるくらいとても魅力的です。
シマリス達の故郷である北の森を目指す旅路は決して簡単な道のりではありません。猛禽類やネコなどの天敵もいますし、何より自然が主人公達を襲います。特に冬の寒さとの戦いは厳しいです。シマリスは冬眠する動物ですし。
でもこの作品を大人に勧めたいと思う理由はそこではありません。(いや、ストーリーやキャラクターだけでも勧めたいと思う良作ではありますが。)
この作品が一番面白くなるのは、最後まで読んでそして何を考えるか。自分でどう昇華するかというところにあると思います。
私が読後なにを考えたかをお話すると、
例えば北の森を目指すという目標は終始一貫しているわけですが、その一貫性は作中でグリックの意思、信念の強さとして表現されています。この信念の強さに作者が込めた思いは果たしてなんなのか。
あるいは、途中で勃発するドブネズミとクマネズミの抗争において、彼らは何故戦うのかという疑問。もちろん作中で理由は描かれているわけですが、私としてはいまいちしっくり来ず、斎藤先生は何を考えてこの戦いを描いたのだろう、と。
あるいは単純に、困難にぶつかりながらも信念を曲げず歩み続けるグリックの姿を読んで、自分もこうありたい、頑張ろうと思ったりとか。
もちろん色々な読み方、楽しみ方を否定するつもりは毛頭ありません。ただこういう読み方、楽しみ方もあるよという参考までにのお話です。
二度目になりますが、ストーリーだけで、キャラクターだけで、あるいは作中で描写される自然の美しさだけで、このお話の挿絵を書くためだけにシマリスを飼い始め、デッサンを続けた薮内先生のイラストだけで、何をとっても、どう読んでも楽しめる作品です。
余談になりますが、基本イラストの方のお名前をタイトルに付けずご紹介している中で、何故この作品にだけ作画の薮内先生のお名前を載せているかというと、やはり他の作品に比べて絵の持つ意味合いが大きいように感じるからです。この作品は、斎藤先生が書く文章と薮内先生が描く絵が合わさっているからこその傑作なのだと思うからです。
50年経っても色褪せない不朽の児童文学。
是非お読みください。
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