【書評・紹介】『イーゲル号航海記 1 魚人の神官』 斉藤洋

2022年10月4日小説,異世界もの,SF小説,児童文学,児童書,冒険小説斉藤洋,コジマケン,ドイツ

斉藤洋によるイーゲル号航海記第1弾!
潜水艦に乗って向かう先はここではないどこか
傑作冒険SF!!

著者:斉藤洋
絵:コジマケン

ストーリー
描写
キャラクター
独自性
電子書籍 有り
対象年齢 小学校高学年~
広告

あらすじ

港で奇妙な潜水艇と出会った少年カール。ひとクセありそうな乗組員たちと、巨大渦の謎を解く旅に出る…。斉藤洋の海洋冒険SF。

魚人の神官 | 偕成社 | 児童書出版社 (kaiseisha.co.jp)

受賞歴

2008年 全国学校図書館協議会・選定図書
2008年 日本図書館協会選定図書

書評

斉藤洋先生による海洋冒険SFです。

児童書ではありますが、大人でも楽しく読める物語です。

主人公はカール・キリシマ・キルシュ。通称カール
日系ドイツ人で、ドイツで暮らしています。
年齢は10歳。

カールはある日、学校をサボって近くの港へと行ったところ、ひょんなことから潜水艦に乗り込み旅に出ることに。
潜水艦の持ち主は、ハインリッヒ・フォン・ローゼンベルク博士
向かう先は、北緯54度、東経8度の海域。
ヘルゴラント島というドイツの島がある近く。

そこではある決まった時間帯、稀に巨大な渦が生じるらしい。
博士はそのことに気づき、潜水艦で調査に赴くところだった。

しかもこの渦、面白いのが

渦というのは、ひとつ生じると、それと同じエネルギーの逆向きの渦がどこかにできるはず。
しかし、ここでは逆向きの渦がどこにもできていない。

つまり、科学的にも謎の渦ということ。

博士はその渦に入ってみるために潜水艦で調査に赴いたのだった。

そして、潜水艦で渦に入ってると……。
その先には、見たことのない生物・魚人が暮らす国があった。

という物語。

この作品は、その魚人の国での冒険が描かれています。

本作の魅力はなんといっても

明快で楽しいストーリー

まず、児童書だけあって、起承転結がきっちりと描かれています。

そして主人公・カールは10歳の少年。
その彼の冒険を通した成長が描かれるのはもちろんですし、10歳の少年だからこそという描写もあり、本当に王道を行く物語です。

一方で、冒険には付き物の戦闘シーン。
こちらもきちんと描写されています。
博士を始めとした大人たちだけでなく、カールも戦います。

子供の頃に多くの人が持っていたであろう、ここではないどこかに行きたいという冒険心。
それをくすぐる作品です。

そして、2つ目の魅力は

個性豊かなキャラクター達!

カールは前述の通り、日系ドイツ人の少年。
所謂ハーフ(ダブル)。
ひょんなことから冒険へと加わった彼ですが、そのきっかけは学校をサボったこと。
なぜ学校をサボったのか。
彼自身の生い立ちや境遇、そして成長。
それらがきちんと描写されることはもとより、このカール自身の生い立ちが……。

そんなカールを冒険に連れていくことになったローゼンベルク博士
天才科学者。
しかし、恐らく異端の科学者。
言ってしまえば、科学者らしい科学者です。
しかし、そうした人物だからこそ、少年カールに与える影響というかもあるわけで。
一言で言えば、好漢。

他にも、乗組員のフランク、コックのハンス・ハンス、そして犬のラインゴルト
などなど、個性豊か乗員が潜水艦には乗っています。

そして、個人的に一番魅力的だと思った点が

SFらしいSF冒険譚

前述の通り、主要登場人物の中にローゼンベルク博士という科学者がいます。
科学者がいるのですから、下手なSF、サイエンス・フィクションを描くと、途端に物語が崩壊してしまいます。

その点、斉藤洋先生はきちんとSFを描いておられます。
前述した渦もそうですし、他にも科学者ならではの視点を通してのSFがローゼンベルク博士の言葉によって、読者へと伝えられています。

その上で、そのSF要素がわかりやすい。
児童書だけあってとてもわかりやすく説明されており、科学が苦手な人でも容易に理解できるでしょうし、むしろこの作品によって科学に興味を持つ人も出てくることでしょう。

潜水艦、異世界、冒険、SF、成長譚。
子供の夢を多く詰め込んだ物語です。

そんな文面に彩りを添えるコジマケン先生の絵。
表紙絵を見ればわかりますが、かなり独特なタッチです。
しかし、この独特なタッチであるからこそ、私達の知らない世界の雰囲気を、その絵を通じて読者に伝えてくれています。

海洋冒険SF。イーゲル号航海記の第1作。
是非お読みください!

単行本

電子書籍

The following two tabs change content below.
自称システムエンジニアのくせに、農学系の地方国立大に通うおかしな生き物。 ひつぎ教育研究所社長。 好物は恋愛小説と生物学、哲学。BL以外はなんでも読む雑食。 一応、将棋のアマ三段。