【書評・紹介】『決戦!大坂城』 葉室麟、冲方丁、伊東潤、天野純希、富樫倫太郎、乾緑郎、木下昌輝

2022年5月23日小説,ローファンタジー,江戸時代,時代小説,戦記小説,短編小説,短編集,バトル・アクション,ファンタジー,歴史小説冲方丁,葉室麟,木下昌輝,伊東潤,天野純希,富樫倫太郎,乾緑郎

葉室麟、冲方丁、伊東潤、天野純希、富樫倫太郎、乾緑郎、木下昌輝
名立たる作家たちがそれぞれの大坂の陣を描いた短編集

ストーリー
描写
キャラクター
予想を裏切られる度
独自性
電子書籍 有り
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あらすじ

慶長二十年(一六一五年)。最終決戦の舞台は、秀吉が築きし天下の名城・大坂城。戦国時代の幕が引かれようとする中、男たちは何のために戦ったのか――伊東潤、葉室麟、冲方丁が再び集結! さらには新たな挑戦者も参陣。当代きっての書き手たちの最新小説が一気に読める。まさに時代小説界の群雄割拠!!七人がひとつの戦場を描く、前代未聞の競作長編。今度の決戦は、戦国最後の大合戦「大坂の陣」!!

『決戦!大坂城』(葉室 麟,冲方 丁,伊東 潤,天野 純希,富樫 倫太郎,乾 緑郎,木下 昌輝)|講談社BOOK倶楽部 (kodansha.co.jp)

書評

七人の名だたる作家陣が大坂の陣を題材に描いた短編小説をまとめた1冊です。
なお、各作家によって歴史解釈が異なっており、よって各短編小説に物語上の繋がりがあるわけではありません。
あくまで大坂の陣を題材に各作家が一人の人物に焦点を絞って描いた短編集です。
各短編ごとに紹介していきます。

『鳳凰記』 葉室麟

淀殿を主人公に何故大坂の陣に至ったのかを描く小説。
ページ数は40ページ。
大坂の陣において悪役として描かれることの多い淀殿の真意と戦いを描いた葉室麟らしい清廉な名作。

『日ノ本一の兵』 木下昌輝

真田左衛門佐信繁を主人公に「日ノ本一の兵」を描く小説。
ページ数は39ページ。
端的に言ってなんとも言えない気持ちになる小説であり、一方でとても上手いと言わざるを得ない小説。
あの「真田幸村」を題材としてかような小説が生まれるとはという驚き。
幸村に感情移入するからこそ受け入れられない結末である一方、物語としては完成し尽くされているという難儀な作品。
タイトルを含めまさに名作。

『十万両を食う』 富樫倫太郎

米を商う商人・近江屋伊三郎を主人公に大坂の陣に伴う米の商いを描く。
ページ数は39ページ。
経済小説と思いきや…?
予想だにしない結末を迎える大阪の商人の物語。

『五霊戦鬼』 乾緑郎

水野勝成を主人公に描く小説。
ページ数は30ページ。
もう大坂の陣関係なく、歴史上の人物達が織り成すただのファンタジー。
はっきり言ってよく分からない小説。奇を衒いすぎていて評価の仕様がない。
短編集の中盤において焦点をぼやかせるような作品。

『忠直の檻』 天野純希

結城秀康の子・松平忠直を主人公に大坂の陣を描く小説。
ページ数は36ページ。
家康との難しい関係や妾であるお蘭との関係と共に忠直の人生をただひたすらに描写する作品。

『黄金児』 冲方丁

城方の大将・豊臣秀頼を主人公に描く小説。
ページ数は54ページ。
天下人の子というある種達観した視点から大坂の陣を描く。
戦記小説というよりも政治小説に近い雰囲気の作品。

『男が立たぬ』 伊東潤

福島正守、坂崎直盛を主人公に千姫の脱出劇を描いた小説。
ページ数は57ページ。
大坂の陣によって散っていった男達を描く、短編集を締めるに相応しい納得感に満ちた一作。

総評

大坂の陣に臨んだ者たち一人一人にそれぞれの著者がスポットを当て著した短編集。
各作家の個性とも言うべきものが各キャラクターに色濃く現れ、それが各キャラクターの個性として振舞うことで、様々な人物がそれぞれの想いを持って大坂の陣に挑んだことがよくわかる作品となっています。

しかし、短編集として見たとき一編ごとの当たり外れが大きすぎるという感想。
また何より誰も徳川家康を主人公に描いていないのが…。
真っ向から徳川方を描いた短編小説が存在しない大坂の陣の短編集とは一体…。
以上のことから短編集としての評価は低めです。

一方で一編ごとに目を向ければ感歎せずにはいられない傑作もあり、総じて見れば読まなきゃ損と断言できる短編集でもあります。
名立たる作家陣がそれぞれの大坂の陣を描いた短編集。
是非お読みください!

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文庫本

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自称システムエンジニアのくせに、農学系の地方国立大に通うおかしな生き物。 ひつぎ教育研究所社長。 好物は恋愛小説と生物学、哲学。BL以外はなんでも読む雑食。 一応、将棋のアマ三段。