【書評・紹介】『杉下右京の多忙な休日』 碇卯人

2022年8月19日小説,警察小説,探偵小説,ミステリー映画(実写),テレビドラマ,鳥飼否宇(碇卯人),アメリカ,北海道

ドラマとはまた違った杉下警部が描かれるノベライズ本
キーワードは「熊」!
相棒好きなら絶対に読んでおきたい推理小説!

著者:碇卯人

ストーリー
描写
キャラクター
推理の意外性
電子書籍 有り
他のメディア展開 テレビドラマ、実写映画、ゲーム、演劇

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あらすじ

右京は休暇を利用して大学時代の友人に会うためにアラスカを訪れるが、そこでは野生の熊に襲われる事件が起きていた。第2、第3の被害者が出て、凶暴な人食い熊も射殺されて一件落着と思われたが……。他1編を収録。大好評スピンオフ第5弾!

朝日新聞出版 最新刊行物:書籍:杉下右京の多忙な休日 (asahi.com)

書評

皆様ご存知、2000年からテレビ朝日系列で放送されている『相棒』のノベライズ本です。
主人公はもちろん杉下右京。
ドラマとはまた違った杉下警部の一面を見ることができます。

もちろん、『相棒』を見たことがない方でも十分楽しめる推理小説です。
しかしやはり『相棒』のあらましだけでも知っていた方が面白いので、読む前に『相棒』という作品の概観だけでも調べてみてください。

なお、前作『杉下右京のアリバイ』を読まずとも1話完結故、問題ありません。
一方、時系列通りに読みたいのであれば事件簿を読んだ上で本作を読むことをおすすめします。

さて、本作『杉下右京の多忙な休日』は『哀しきグリズリー』と『天空の殺意』という「熊」が関わる2つの話からなります。
どちらもドラマ、映画の脚本にはなっておらず、ノベライズ本独自のストーリーです。
詳細は各話の書評にて。

ずいぶんクマの勉強をしました。実際にヒグマにも遭遇しました。

碇 卯人

哀しきグリズリー

時間軸はSeason13-19話・悪名高きあの「ダークナイト」でカイト君が去ってから、Season14-1話で冠城くんがやってくるまでの間。
杉下警部が無期限の停職処分となっていた頃のお話。

舞台はアメリカ合衆国、アラスカ州はジュノー。
東京大学在学中に留学してきたパトリシアに誘われて訪れた北の大地で人食い熊事件に遭遇し…というお話。
人食い熊事件の裏側にある真実を杉下警部が暴きます。

この話の特筆すべき点はドラマでもたまにあるように、社会的な事柄に切り込んでいる点。
ここでは先住民であるネイティブ・アメリカンを巡る問題や動物愛護を巡る問題について触れられます。
こうした事柄を扱う事でより物語に深み、リアリティが増し面白くなっています。

天空の殺意

時間軸は『哀しきグリズリー』の直後。
無期限停職中に今度は北海道、知床を訪れた杉下警部。
知床ではちょうどトレイルランニングの大会が開かれていた。
そんな折、網走刑務所から受刑囚が脱獄。トレイルランのコースへと紛れ込んだ。
脱獄犯を追い山道に入る杉下警部。
しかし山中では人が死んでおり、脱獄犯も取り逃がし、参加者らと共に濃霧に包まれ山中に閉じ込められてしまう。
霧による密室の中で、杉下警部が持ち前の推理力を発揮していく…というお話です。

このお話も知床の環境保護など社会的な問題が絡んでいます。
しかし何より特筆すべきはやはりその結末。
杉下警部を主人公に置いたからこそ描けた実にミステリーらしい、相棒らしいラストが待っています。

総評

ドラマと変わらず、杉下警部がらしさ全開で事件を解決していく推理小説です。
前作、『杉下右京のアリバイ』はアリバイトリックという題材で描かれていましたが、こちらのキーワードは「熊」。
どちらも北の大地を舞台に熊の関わる推理小説が描かれます。

カイト君が衝撃の退場をしたあのダークナイト事件の後の出来事ということを頭に入れて読むと、杉下警部の心情というかがまた少しわかるような気がする小説でもあります。

ドラマとはまた違った杉下警部が描かれるノベライズ本。
相棒好きなら絶対に読んでおきたい1冊です。
是非お読みください!

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自称システムエンジニアのくせに、農学系の地方国立大に通うおかしな生き物。 ひつぎ教育研究所社長。 好物は恋愛小説と生物学、哲学。BL以外はなんでも読む雑食。 一応、将棋のアマ三段。