【書評・紹介】『スターティング・オーヴァー』 三秋縋
二周目の人生はクリスマスから始まった。
僕は一周目の完璧な人生を再現しようと試みるが…。
三秋縋 圧巻のデビュー作
二周目の人生を経て僕が得たものは。
| ストーリー | |
| 描写 | |
| キャラクター | |
| 結末が気になる度 | |
| 独自性 | |
| 電子書籍 | 有り |
あらすじ
二周目の人生は、十歳のクリスマスから始まった。全てをやり直す機会を与えられた僕だったけど、いくら考えても、やり直したいことなんて、何一つなかった。僕の望みは、
「一周目の人生を、そっくりそのまま再現すること」だったんだ。
しかし、どんなに正確を期したつもりでも、物事は徐々にずれていく。幸せ過ぎた一周目の付けを払わされるかのように、僕は急速に落ちぶれていく。――そして十八歳の春、僕は「代役」と出会うんだ。変わり果てた二周目の僕の代わりに、一周目の僕を忠実に再現している「代役」と。
スターティング・オーヴァー | 書籍情報 | メディアワークス文庫 (mwbunko.com)
書評
これは、
スターティング・オーヴァー 冒頭より
二十歳の誕生日を迎えた僕が、
十歳まで時を巻き戻されて、
再び二十歳になるまでの話だ。
主人公は自分の人生について、何の後悔も持っていませんでした。幸せ者でした。最高の恋人、最高の友人、最高の家族、まあまあの大学。足りないものなんてなに一つないように思っていました。
しかし、主人公は二十歳の誕生日に十年間時を戻されてしまいます。タイムリープです。
主人公は幸せな人生を送っていたのですからこう思います。
「なんて余計なことをしてくれるんだ」と。
そして主人公は二周目の人生において、一周目のそのままやり直そう、徹底的に再現しようと決意し、実行します。
バタフライエフェクトという言葉があります。とある気象学者が「蝶がはばたく程度の非常に小さな撹乱でも遠くの場所の気象に影響を与えるか?」という問いかけを行ったことに由来します。結論から申し上げると、初期値、初期条件の僅かな差は未来において大きな差異をうむことがわかっています。
私は最初この作品を読んだとき、このバタフライエフェクトが脳裏に浮かびました。
一周目の記憶を持っている時点で、一周目と二周目は初期値が異なる。ましてや人間が同じことを忠実に再現できるわけがない。呼吸の回数からいつどのような言葉を発するかまで再現するのは不可能であり、いくら努力しようと一周目の人生は返ってこないと。
結果として、二周目に入って五年も経つ頃には、主人公の人生一周目の人生とは大きく様変わりしていました。徹底的に落ちぶれてしまいました。
この作品は一周目と様変わりしてしまった二周目の人生において、主人公は何を思うのか、何を得るのか、何に気がつくのか、変わらないものはあるのか。そういったお話です。
本作は著者三秋縋先生のデビュー作になります。
三秋縋作品はここから始まったと言ってもいいのかもしれません。
暗闇の中に描かれるちいさな、それでいて優しい光というか、
不幸の中に存在する一縷の幸福というか、
三秋縋先生によって描かれるあの独特の世界観と描写がギューッと凝縮されている。そんな作品です。
願いってのは、腹立たしいことに、願うのをやめた頃に叶うものなんだ。
「スターティング・オーヴァー」 三秋 縋[メディアワークス文庫](電子版) – KADOKAWA
是非お読みください。
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