【ネタバレ・考察・感想】『きみと世界の終りを訪ねて』 こるせ

2022年8月19日ネタバレ含む

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再定義する希望 redefine(“Speranza"); について

redefinは再定義。Speranzaはスペランツァ。
つまりスペランツァ、希望を再定義する。
上手く言語化はできませんが、なんとなくわかるような気がします。

継ぎ接ぎの希望を抱いて ∴x=Speranza について

∴は故に。つまり、「故にxはスペランツァ、希望である」といったような意味合い。
ここでいうところのxはクローンのことであり、クローンに希望を意味するスペランツァという名前を付けるまでの過程を描いた物語だったのかなと思いました。

灯火の機械たち Inherit the Touch について

Inherit the Touch.
直訳すると「タッチを継承する」。
つまり、マドカの生体データをミミが継承し、セキュリティが解除された場面を切り取った言葉だと思われます。

そして、考え甲斐があるのが残された映像データの部分。
特に「私たちは助からないが 私たち 未来を託した種 各地に残し」という言葉。
未来に託した種とは一体何のことでしょう。
研究員の言葉だとすると、種とはクローンのことなのかなと思ったりもしますが、みなさんはどう思いますか?

きみと世界の終りを訪ねて keep the end just a little longer について

keep the end just a little longer.
終りを、終末をもう少しだけ長く。といったような意味合いでしょうか。
もう何の説明も必要ありませんね。

一方で気になるのは、このタイトル
『きみと世界の終りを訪ねて』
は誰の言葉なのか。
そして「きみ」とは誰を指すのか。

言葉遣いからして、ラリベルタやスペランツァの言葉ではないように思いますが。
誰の言葉なのでしょう。

私は勝手に、最後まで生き残ったユユがミミ(ミミは適応実験の結果寿命が短い)にかけた言葉なのかなと思いましたが、みなさんはどう思いますか?

作中で登場する組織について

ET社:アンドロイドの製造元。
EN社:人間と見分けの付かないアンドロイドの開発に初めて成功した企業。
EPF:テロ組織。

EはEarthのEのような気がしますがどうなんでしょう?
そもそも何故みんなEから始まるのか?

カバー下のイラストと文字について

裏側のカバー下を見てみてください。
上から順に

「大丈夫、あなたならきっとたどり着けます」
…You’ll get there.

DATE:2960.05.06
「一緒に海を見に行きましょう」
「約束です」
I promise, we’ll go see the ocean together.

DATE:2960.04.20
「いつか外に出られますように」
I hope one day I will be able to go outside.

ママ、ラリベルタ、そしてスペランツァの言葉が日付と共に書かれています。

キーワード「海」について

スペランツァが見たがった海。
人に滅亡をもたらした海面上昇、死の海。
かつての海を再現した、ロボットの魚が泳ぐ水槽。
月にある海。

作中では事あるごとに「海」についての言及が何らかの形でなされています。
何故なのでしょうか。

色々考えたのですが、作者である「こるせ先生」が海好きだからなのかなあという結論に至りました。

こるせ先生の「海」に関する発言はこちら

何故最後全員で月に行かなかったのか

軌道エレベーターに2人しか乗れないなどの設定はなかったはずですし、何故全員で行かなかったのか。
色々と考えたのですが、最終的に
・エリザベスと交わした約束を守るためにミミ、ユユは残った
という結論に行き着きました。
合っているかはわかりませんが、エリザベスの最後の言葉を思うと、むしろ二人が残ってくれて良かったなと。

何故、スペランツァとラリベルタ、ミミとユユに別れたのか

ここからは勝手な推測です。
スペランツァのオリジナルのエレーナ、ミミのオリジナルのマドカ。
2人は愛し合っていました。
そのことを踏まえれば、スペランツァとミミが一緒に過ごすのが望ましいように思います。

しかし、スペランツァはエレーナのクローンであってもエレーナではありませんし、
ミミはマドカのクローンであってもマドカではありません。

そしてスペランツァはラリベルタと、ミミはユユと時間を過ごしてきました。
思い出や仮想記憶によって終盤に描かれたエレーナとミミの想いは残っていても、2人の想いはその時点で果たされ、2人はそれぞれ時間を過ごしたラリベルタ、ユユと共にいるという選択をしたのかなと。

どちらにせよ、SF作品として
「自分とは誰か」、「オリジナルとクローンの違い」という難問に
1つの答えを導き出しているように思えました。

物語のその後

ARCHIVESとその隣、175ページのイラストに描かれています。
175ページのイラストはきっと月での2人ですよね……?

そして問題はARCHIVESの方。
2961年にスペランツァとラリベルタが月へと旅立ち、その後。
ミミとユユの会話から衛星の再起動を妨げなかったことはわかります。
しかし、2982年のこれは……。
ミミは寿命が短いという言及がありましたし、恐らくラリベルタでしょうか。
でもきっと月の海は見られたはずです。もしかしたら月から地球の海も。

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自称システムエンジニアのくせに、農学系の地方国立大に通うおかしな生き物。 ひつぎ教育研究所社長。 好物は恋愛小説と生物学、哲学。BL以外はなんでも読む雑食。 一応、将棋のアマ三段。